7月

第10話

 一学期期末テストが始まった。

 課題だった数学の証明は母さんから教えてもらったように、少しずつ解答欄も埋めていくと、いつの間にか答えで埋まっていた。

 そのあとの国語では、いつものように解けて、手応えがあった。

 いま解いているのは、理科……今回の分野は苦手なのに。

 問題用紙を見た途端、絶望してしまった。

 解答用紙も配られて緊張感が教室を包んでいく。

 チャイムが鳴り響くと

「それでは、始めてください」

と、試験監督の先生の合図と同時に、問題用紙と解答用紙をひっくり返し、名前や解答を書くシャーペンの音が聞こえてきた。

 わたしは名前を書いて、最初の選択問題は理科のワークに乗っていた問題に似ていたから、なんとか解けている。


 そして、最大の難問。

 イオン結合の式を書くもの。

 わたしが一番苦手としている問題が出て、ため息が漏れる。

 その計算は比較的簡単で、解答用紙が埋まっている。

 少しだけ生物分野の遺伝の計算は好きだから、楽勝で解けた。

 全部の問題は解いて、残りの空欄を埋めていくことにした。

 諦めずに解いていたのになかなか難しく、そのままテストの終了を告げるチャイムが響いた。






 それから、一週間後。

 毎日のようにテスト返却が相次ぎ、理科が最後の教科になっていた。

 いまのところは平均点は取っているけど、理科が不安だった。

「テスト、返却するぞ~」

 理科の江嶋先生がテストを返却していく。

「橘。がんばったな!」

 先生が話してくれた。

 点数は六十九点!

 一番、いい点数が取れた。

「小夜。めちゃくちゃ喜んでるね、六十九? がんばったじゃん!」

「信じられないけど、よかった?」

「いいよ! 平均点が六十二だもん、もともと点数高いのに」

 みゃーちゃんも点数が上がっていて、ホッとしているらしい。

 でも、悠里の表情は暗くて、いつもの表情ではなかった。

「櫻庭。今回、点数が悪かったらしいの。平均点くらいみたいだし」

「え、そうなの? 珍しいね」

 みゃーちゃんもうなずいて、悠里の異変を知っているみたいだ。



 休み時間になってから、最近の悠里のことを教えてくれた。

「櫻庭とは同じ進学塾でクラスはうちは私立クラスで、あいつは都立クラスだけど、やっぱり塾の成績も下がってるらしいの」

 いつも塾ではトップクラスの成績のはずなのに、ここ最近はとても悪化しているということを教えてくれた。

「そうなの? どうしたんだろう?」

「わからない」

 少し、モヤモヤした気持ちで次の授業を受けた。








 放課後、掃除を終えて帰ろうとしたとき。

「橘、ちょっといいか?」

 悠里がいきなり、話しかけてきた。

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