第66話 あいあい傘と愛羅②

「そういや連絡先交換今までしてなかったな」

「アーシがりょーまセンパイのバイトの日に毎日来てたし、あまり不便はなかったけど……仲良い人は連絡先持っときたいし。それで……交換ダメ?」

「いや、全然良い」

「あんがと」

「いや、俺の方こそ」


 出会った当時、とある漫画に出てくるお兄ちゃんとソックリという理由で愛羅が気になっていた店員、龍馬。

 そんな龍馬と連絡先を交換する日がやってきたのはもちろん嬉しいこと。

 愛羅の声色は楽しそうにも跳ねていた。


「りょーまセンパイってSNSは何使ってる? LINE? Twitter?」

「一応どっちもしてる」

「ちょ、マジ!? りょーまセンパイのTwitrer見たいんだけど! じゃあどっちも交換で!」

「……俺のツイッター、マジで呟いてないぞ?」

「良いから良いから! 先にLINEね!」

「了解」

 

 龍馬は後ろを振り向く。歩道に誰も居ないことを確認してその場に立ち止まり、ポケットからスマホを取り出す。


「アーシがQRコード読み込む」

「じゃあ俺がコード出す」

「うい」

 龍馬はL○NEアプリを開きQRコードを出す。その画面を愛羅が専用カメラで読み込み、追加ボタンを表示させた。


「りょーまセンパイ追加した」

「あぁ、こっちも追加しとく」


 右上に友達追加された表示が付き、登録した。

 LINEのアカウント名は『あいら』とひらがな表示。そのトップ画は……加工されたガチャガチャのダンゴムシが写っていた。


「って、トップ画俺のあげたダンゴムシかよ……」

「可愛いっしょ? ハートつけたりで加工して」

「ダンゴムシのフォルムをどうにかしてくれ」

「元はどうにもならないって。でもなんだかんだ嬉しそうじゃんりょーまセンパイ」

「うっさい。ほら、次Twitter交換するぞ」

「ういうい」


 そうして次にTwitrerの交換である。


「りょーまセンパイのユーザーIDってなに?」

「なんかアルファベットと数字でめちゃくちゃだから愛羅の教えてもらえるか? 俺の方からだと打ち込むのが大変だと思う」


 姫乃の件で検索方法を教えてもらっている龍馬。もうお手の物である。


「ID設定はしてたほーがいいよ? 交換する時に使うし」

「Twitrerは本当に使ってないからいいかなって」

「そんなウソ言って。じゃアーシの教える」

「頼む」

「えっと、最初がアットマーク。次がAエー


 愛羅は口頭で自身のユーザーIDを伝え、龍馬は手打ちしていく。


「——これで終わり」

「あーこれだな」

 そしてヒットしたアカウントはもちろん1つ。タップしてアカウントを流し見る。


「……いや、なんでこうもフォロワー多いんだよ」

「フォロー500のフォロワー2200はスゴイっしょ? なんか別の高校からフォローされたりで増えた」

「人気者だな……」


 愛羅のTwitrerのアカウント画像は友達とのツーショットだった。可愛いという理由で愛羅とのやり取りをしようとしている相手もいるだろう。

 つまり、別の高校で愛羅の噂が流れているとも言える。


「ってか早くフォローしてくれないと、りょーまセンパイのアカウント見られないんだけど」

「悪い、今フォローした」

「お、通知きた……って、アハハッ! フォロー数フォロワー数1じゃん! しかも初期のプロフィール画像だし」


 愛羅のフォロー数、フォロワー数からしたら龍馬の数はチリのようなものだろう。

 なんたって一桁なのだから。


「だから言ったろ? 全然使ってないって」

「アーシ含めてもまだ2人だし! ちょ、誰こんなのフォローしてる人。絶対、りょーまセンパイと一番仲の良い人じゃ——」


 愉快そうに龍馬のフォロワーを確認した愛羅。次の瞬間に顔の強張りを見せた……。


「ど、どうしたんだよいきなり固まって」

「こ、コレ……コレって……」

「あぁ……」

 

 漫画好き、特にラブコメ漫画好きの愛羅……。龍馬をフォローしているアカウントは、愛羅がよく知る、愛羅がそのアカウントをフォローしている、そんな有名人……。


 フォロワー16万人を抱える人気漫画家。


「な、なんで……でびるちゃんさんからフォローもらってんの!? なんで初フォロワーがでびるちゃんさんなの!?」


 こうして食いついてくるのは、当然である。

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