TAKE6

 そこは、調布市の外れにあるショッピングモールだった。今日はここの駐車場の一角を利用して『戦隊ヒーローショー』が開かれている。


『戦隊ヒーローショー』などといっても、テレビなんかで放送されているメジャーなものではない。


 地元のローカル局で制作され、地元だけで流している、つまりは『ご当地ヒーロー』で、しかしそれでも子供達には一定の人気があるようで、一か月に一度か二度開催されるこのショーには、近くの子供たちが詰めかけるそうだ。


 1ステージ20分ほど、その後握手会と撮影会が20分ほど、賞味40分くらいで終了する流れになっている。


 ショーの中身は悪者を五人(それにしても何故1チーム五人なのだろう?)が倒してそれで終わりという、まあ、お決まりのストーリーになっていた。


 俺は子供たちの一番後ろに立って、ショーを最初から終わりまで眺めた。


 握手会とサイン会が終わり、観客が全員帰ってしまった後、俺は後片付けをしているスタッフを横目で見ながら、ステージの裏に回り、


『関係者以外立ち入り禁止』と描かれた札の出ているドアを開けた。


『すいませ~ん、ここは関係者以外は・・・・』


 中では着ぐるみを半分降ろしてパイプ椅子で車座になった4~5人が、煙草を喫ったりペットボトルに口をつけてラッパ飲みをしていた。


 俺に声をかけたのは、ニキビだらけののような顔をした男である。


 彼は俺の顔を見ると、真昼に幽霊にであったような表情になった。


 車座の中にはあの、ベースボールキャップの男の顔も見えた。


『おい、聞こえなかったのか?ここは・・・・』


 キュウリ男が後ろから俺の肩をつかんだが、俺は構わず奴の手首をねじり上げ、右前に投げ飛ばす。


 置いてあったテーブルや椅子が派手な音を立てた。


 俺は何も言わず、黙って懐から認可証ライセンスとバッジのホルダーを突き付けた。


だよ。だが、今度は非暴力って訳にはいかないぜ』

俺は唇の端をぺろりとめ、一同を睨みつける。


奴らは『畜生!』と叫びながら、俺にかかってきた。


 どうやら、冷静に怒った時の狼がどんなものか知らないらしい。



・・・・・きっかり五分後、俺は手をはたいていた。


 一同は床の上に他愛もなくのびている。


 俺はあのキャップ男の顔に、手近にあったペットボトルの水をぶっかけ、目を覚まさせると、来ていたアンダーシャツの襟を掴んで引きずり上げた。


『これでも手加減してやったんだぜ?どうだ?気分は?』


『て、手前ぇは一体・・・・』


『だからただの私立探偵さ。さあ、しっかり目を覚ましたら、俺の聞きたいこと、知りたいことを喋ってもらおうか?』


 




 


 


 



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