第52話 リオン復活計画始動!
完全に、言葉を失った。
生まれてこのかた、私の知る限り、ずっと完璧であり続けたリオン。前世の公式サイトでも、美形度は最も上の存在として描かれていた。
それが……それがこんな、まるまるころころと……。
「……本当に、リオン様ですの?」
同じく、目に映ったものが信じられないのだろう。呆然と呟いたシエルに応えたのは、深い溜息を吐いたジェフリーだった。
「俺も正直認めたくはないが、正真正銘兄上だ。お前達との一件以来部屋に引きこもるようになってな、気が付くとこんな姿に……」
「あああ……こんな醜い姿を人に、それもシエルさんとカタリナに見られて……私はもうおしまいだ……」
そしてリオンはと言えば、ブツブツとそう言いながら部屋の奥にうずくまっている。そこに、私の知っている自信と希望に満ち溢れていたリオンの姿はどこにもなかった。
「……兄上がいつまでもこの有様なものだから、王位継承権一位の座を俺に移そうという話まで最近は出てきていてな」
「え?」
どこかバツの悪そうなジェフリーの台詞に、私は驚く。話がそんなところまでいっていたのもそうだけど、それを喜んでいない様子のジェフリーが、私には意外に映った。
「嬉しくないの? リオンよりも自分が評価されるのは、貴方の最大の望みだったじゃない」
「馬鹿兄の勝手な自滅で勝って嬉しいものか。万全の状態の兄上に、実力で勝つのでなければ、俺の望みは叶ったとは言えない」
う……唐突な良きライバルムーブ止めてえええええ! 疼くから! 推しの尊さに私の前世が疼くから!!
「……とにかく、要は、リオン様を立ち直らせるお手伝いをすれば良いのですね?」
そんな私の心境を読み取ったかのように、シエルが迫力のある笑顔になって言う。ジェフリーはそれに若干気圧されながら、コクリと小さく頷いた。
「お姉様、どうされますか? 正直わたくしは、果てしなくどうでもいいのですけど」
シエルに問われ、考える。彼を「元婚約者」として見た場合、私もシエルと同じく、どうなろうがどうでもいい事だと思う。
けど、ただの幼馴染みとして見た場合……こんなにも変わり果てた彼をそのままにしておくのは、どこか忍びない気持ちになってしまう。
婚約破棄を取り消す気はさらさらないけど、それとは別に、昔のリオンに戻って欲しいとも思う。……これって我が儘かしら?
「……解ったわ」
「お姉様?」
決意を固め、私は顔を引き締める。そして、リオンを真っ直ぐに見つめた。
「リオン!」
「はいっ!」
「貴方の性根、私がここで、みっちりと叩き直してあげるわ。覚悟しなさい!」
リオンをビシッと指差し、私は、高らかにそう宣言した。
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