第37話 追跡!密会現場!
「それではお姉様、わたくし、使用人クラスに行って参ります」
授業を終えて迎えた放課後。そう言ってそそくさと教室を出るシエルを見送ってから、私は席を立った。
尾行なんて下手な真似はしない。ていうか素人に出来る訳ないでしょそんなの。前世が読んでた漫画とかでもほぼほぼ失敗するのがお約束だったし!
という訳で、私が取る事にした、シエルの行き先の調査方法とは。
「……カタリナ」
不意に名を呼ばれ、私は教室の外を見る。するとジェフリーが、こっちに向かって手招きをしていた。
「来たわね。首尾はどう?」
「ロイドとディアスが今ヨシュアの行方について聞き込みしている。こういう時はロイドの人当たりの良さと、ディアスの迫力は頼りになるな」
ジェフリーに近寄ってそう問いかけると、手短に現状を語ってくれる。ひとまず計画通りに事が進んでいる事に、私はホッと胸を撫で下ろした。
私が取った手段、それは――ヨシュア側の行動を聞き込みで調べる事。
要は逆転の発想だ。シエルとヨシュアが二人になる現場を押さえたいのだから、別にシエルだけを追いかけるのにこだわらなくてもいい。
どうせ二人が会うのなら、こちらに対しての警戒がより薄いであろうヨシュアの足取りを追った方がリスクは低い。私はそう睨んだのだ。
「私とあなたじゃ、聞き込みには目立ちすぎるものね。ディアスも決闘の件があるから目立つと言えば目立つけど、あの迫力だから、口止めさせる事は簡単だし」
「権力よりも暴力の方が口止めに向いているというのも皮肉なものだな。……いや、まぁ、アイツは実際には大人しい性格だが」
しみじみジェフリーと語り合いながら、ロイド達からの報告を待つ。二人がヨシュアの居場所を突き止め次第、全員でその場所に踏み込む手筈になってるけど……。
「おーい、カタリ……もがっ!」
その時廊下に大きな声が響き渡って、私達は反射的に身を竦ませる。振り返ると、ロイドがディアスに後ろから口を塞がれてもがいていた。
「……大声を出すんじゃねえ……」
「もがー、もがー!」
「……何をやってるんだお前達は」
溜息を漏らすジェフリーに釣られて、私も頭が痛くなる。……本当に大丈夫だったのかしら、これ……。
「ディアス、ヨシュアの居場所は解ったの?」
「ああ……それはバッチリだ」
「ぷはっ! いきなり何すんだよ、ディアス!」
私がディアスに成果を確認していると、ディアスの拘束から強引に抜け出したロイドがそう不平を漏らす。そんな反省の様子のないロイドに、ジェフリーが呆れた視線を向けた。
「あれはお前が悪い。俺達が隠密行動をしているという事を忘れたのか」
「だって、早くカタリナに褒めて欲しくてさー……」
「……お前、シエルが好きなんだろうが」
「え? 俺カタリナの事も好きだぜ? 二重の意味で、シエルがいなかったら口説いてたぐらい!」
「……なぁ、口塞ぐだけじゃなくて、今度はひっぱたいていいか、コイツ」
あっけらかんと放たれたロイドの問題発言に、今度はディアスの悪い目つきが更に悪くなる。って、駄目駄目、話が脱線しかけてる!
「とにかく! ヨシュアの居場所に、早く乗り込みましょう!」
「そ、そうだな。案内しろ、ロイド、ディアス!」
「おう! こっちだ!」
胸に一抹の不安を抱えながら。私は先頭に立ったロイドの跡を、周囲を警戒しながらついていくのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます