第28話 主人公(ヒロイン)からの挑戦状
笑っているのに怒っている――そんな顔を、見た事はあるだろうか。
それはとても華やかで。けれどもとても恐ろしく。
率直に言うと直視したくない。うん、したくない。
なのに怖すぎて目が逸らせない。つまり八方塞がり。
「お姉様……これは一体どういう事です……?」
笑顔で黒いオーラを振りまきながら、シエルが一歩を踏み出す。私も、ヒョウタも、すっかり固まってしまってその場から動けない。
「あ……あわわ……何で主人公がここにぃ……」
それどころかヒョウタは、シエルを見てすっかり怯えてしまっている。ああうん……攻略されたくないからって徹底的にシエルを避けてたものね、ヒョウタは……。
「シ、シエル、これは……」
「そういう仲なのですか?」
「いや、その……」
「お二人はそういう仲なのですか?と、聞いているのです」
その小柄な体に似合わないほどの圧をかけながら、またシエルが一歩近付く。……ヒョウタは頼りにならないし、ここは私がしっかりしなくちゃ……!
「……共通の趣味を持ってる事が解ったから、その話をしてたのよ」
「このような場所で、人目を避けて、ですか?」
「こう見えて、ディアスは人見知りなの。その克服も兼ねてるのよ」
「……」
私の説明に、シエルが一旦黙り込む。納得してくれたのかと、そう思ったのも束の間。
「……では、先程の事はどう言い訳なさるおつもりで?」
「え?」
「キス、なさっていたでしょう? お二人で」
「は!?」
キ、キス!? シエルったら、一体何の事を言ってるのよ!?
けれどすぐに思い出した。さっきヒョウタが、顔を近付けてきた時の事。
あれが、シエルの角度からは、キスに見えてたって事!?
「ディアス様」
私が反論するより前に、シエルの矛先はヒョウタの方へ向けられた。ヒョウタはビクリと肩を震わせ、急いでシエルと目を合わせる。
「は、はいっ!?」
「ディアス様は、お姉様の事を好いておられるのですか?」
「へ、へえっ!?」
「わたくしのお姉様を、女性として好いておられるのですか?と聞いています」
「そ、そんな、カタリナさんは確かに魅力的な人だけど、僕には勿体ないくらいで……っ」
「……成る程」
完全に素が丸出しのヒョウタの弁明に、シエルの笑みがスッ、と消えた。そしてヒョウタを指差し、こう宣言する。
「わたくし! お姉様を賭けてディアス様に決闘を申し込ませて頂きます!」
「……ハアアアアアアアアアッ!?」
私とヒョウタの驚愕の叫びが、校舎裏に木霊した。
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