第6話 たまには悪役令嬢らしく
教室を出ると、既にシエルの姿はなかった。私は焦りながらも、シエルがどこに行ったかを考える。
場所は、人気のない教室であったとしか覚えてない。けど今は放課後。そんな教室、いくらでもある。
「……片っ端から、探していくしかないわね……!」
まずは今いる三階から、今の時間に使われていない教室を一つ一つ見て回る。けど、二人の姿はどこにも見えない。
「上か、下か……」
上の四階は特別教室ばかりで、空いている教室には事欠かない。下の二階は使用人クラスがあって、使用人を使ってシエルを連れ込むなら自然ではある。
「両方回る時間はないわ。もしその間に……」
シエルが、男だとバレてしまったら。
私は一番、それを恐れている。騙されたと激怒するか、逆に男だと周囲にバラされたくなかったらとシエルを支配下に置こうとするか……。
どっちにしろ、ろくな事にはならない。そうなる前に、私が助けないと……!
「……ええい、ままよ!」
悩む時間も惜しい。私は勘だけを頼りに、階段を下る事にした。
二階は帰り支度を終え、三階に向かおうとする使用人達で一杯だった。私はその流れに逆らうように進み、さっきシエルを呼びに来た使用人達を探す。
どこ、どこなの。まさか勘が外れたなんて事は……。
「……!」
いた! 廊下の一番奥の教室の前……そこに三人ともいる!
「貴方達、道を開けなさい!」
そう私が一喝すると、辺りにいた使用人達が一斉に左右に割れる。こういう時、公爵令嬢の立場は便利だわ。
障害物のなくなった廊下を駆け抜け三人の使用人に迫ると、私に気付いた彼らは明らかに不味い、という顔をした。やっぱり……ジェフリーが彼らを使って、シエルを呼び出したようね!
「カ、カタリナ様……」
「そこをどきなさい、貴方達」
「だ、駄目です! 例えカタリナ様であろうとも、お通しする事は出来ません!」
私は毅然と言い放つけど、三人はそう言って教室の前から動こうとしない。貴族、しかも自分の主人よりも位が上の家の者に大してこの反応。やっぱり、ジェフリーの息がかかっていると見て間違いなさそう。
でも私も、ここで引く訳にはいかない。こういう時は……やっぱりこれに限るわね。
「リオン王子の婚約者である私に逆らう事は、リオンに逆らうのと同じ。それが解って言ってるのかしら」
「そ、それは……」
「どいて。三度目は言わないわ」
最後に目で三人を威圧すると、三人は怯えたように顔を見合わせた後、走って教室の前から去っていった。うん。持つべきものは権力のある婚約者。
さぁ、これで邪魔者はいなくなった。シエル、今助けるからね!
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