交差する2人
「お前さぁ。大人になったら何になりたいんだ?」
「んー……さぁ? 僕は何になりたいんだろ。……少なくとも他人を助けられるようにはなりたいかなぁ」
二人で木剣を打ち合いながら
「それだけ勉強も出来て、戦闘能力も高いんだからきっと何だってなれるさ。まぁ、俺は騎士になるって決めてるけどな!」
そう言って笑う彼と夢を語り合ながら木剣を振っていた日々を思い出す。
毎日毎日、日が昇って沈みきるまで木剣を振っていた彼も、18年もたった今では立派な王国の騎士だ。
そんな彼の剣は……。否、そんな彼とその仲間達の持つ直剣は真っ直ぐに俺へと向けられていた。
それもそうだろう。足元には千を越える彼らの仲間の死体が積み上げられている。
全て……俺が
「……どうして……どうして彼らを殺したんだ!! 彼らには帰りを待つ妻が、娘が、息子が、家族がいたんだ……なのにどうしてお前は!!」
涙を流しながら吠える彼に、ただ淡々とした言葉を返す。
「お前はさ……自分のことで一杯で周りがいつも見えていない。だから理不尽に蔑まれる人も何も見えていない」
まずは彼を否定する。
「国の上層部は欲望を満たすことしか考えていない。国民の苦しむ現状を改善しようともしない。無能、怠慢。ただただこの国は腐っている」
次に仕える
「だから壊す。だから殺す。誰かを救いたがってた昔の俺がいると思ったら大間違いだ。少なくとも、この国の王を殺すまで、俺は止まるつもりはない」
最後に……かつての夢を否定した。
誰かを救いたいという漠然とした夢が壊れた瞬間、こうなることは必然だった。
守るために騎士になった彼と、弱者を助けたいと思ったがために国に喧嘩を売った自分自身が争う未来。
「おい◯◯。お前に手加減なんかできないからさ、殺すつもりでお前を止める」
「やってみろよ◻️◻️。お前に勝って全て壊し尽くしてみせる」
そして二人は剣を振るう。
何も知らず、満たされていた、無邪気な子供だったあの頃のように……。
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