最終話「フィフス・ウイング」

 スゥ……


 その小鳥は、馴染みとなっている年老いた竜、願い竜と共に空を行く。


――グゥ、ル――


 老竜はもはや余命は幾ばくもなく、先の青年から得た力も、彼の身体を支えてはくれない。


――チッ、チィ――


 その老竜を心配そうに見つめる小鳥。だがそのつぶらな瞳に老竜は何の反応も示さず。


 ズゥ、ン……


 その身を、一つの浮遊島にと横たわらせる。その一面の草原が広がる浮遊島には、数々の無縁仏の墓。その墓の一つには二組のペンダントが掛けられている。


「今日も、良い天気ね……」


 片腕を無くした女性が一人、まるで横たわっている願い竜の姿なぞは見えないかのように、一つの墓に花束を手向ける。


 ザァ……


 その時、一陣の風が吹き荒れ。


――グァウ――


 老竜の声と共に、花びらのような手紙の束が舞い上がる。その「花」と踊るように小鳥が空へと飛ぶ。


「……」


 年老いた竜はもはやその瞳を閉じたまま、動く気配がない。その竜を最後に振り返り、姿を見た小鳥はそのまま太陽にと登っていき。


――チッ、チィ――


 最後に、虹の翼を見た。



~完~

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空と船と願い竜 早起き三文 @hayaoki_sanmon

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