第12話「人の死」

「小鳥?」


 その、外部通路に出ている彼エドワードの指には、小さな鳥が止まっている。


「こんな高高度に、珍しいな……」


 もっとも、遥か高くの高度では空気が薄くなるらしく、人が生存出来ないみたいであるが、この位の空域であれば特に行動に支障はない。


「よしよし……」


 たまたま昼飯のパンを持っていたエドワードは、その小鳥にとそのパンくずを分けてやる。


「人懐っこいやつだな、誰かに飼われていたのか?」


 そのエドワードの手のひらに乗ったまま茶色の羽を羽ばたかせるその小鳥は、そのまま嬉しそうにパンくずをくちばしでつまんでいる。その光景をみて、エドワードのその頬が僅かに綻ぶ。


「でも、軍艦では飼えないんだよな」


 そう呟きながら、エドワードはその小鳥を艦の手すりにと止まらせ、その足元にパンくずを置いてやる。


「どうせ風で飛ばされてしまうけど、じゃあな……」


 この事も今日の恋人、エリアへの手紙に書こう、そう思いながらエドワードは自らの持ち場、下方砲台室へとその足を運ぶ。


「あ、願い竜」


 下方へのタラップを踏んでいるエドワード、彼の視線の先に一匹の願い竜がその翼を拡げながら、悠々と宙を泳ぐ。


「何か、色合いが悪いな……」


 確かにエドワードの言う通り、その願い竜の虹色の翼は所々色褪せており、何かくたびれている様子に見える。


「老竜、かな?」


 その願い竜をじっくりと観察したい所だが、すでに彼の当直の時間は来ている。エドワードは慌てて下部砲台にと歩き始めた。


「ん?」


 下部砲台、そこから見える雲海に何か光る物が、エドワードの目を射抜く。


「何だろ……?」


 ズゥン!!


 その時、その下方に位置していた細長い胴を持つ戦列艦「ガルガナー」からの砲撃が、彼の身体を粉砕する。


――エリア――


 その彼の声は、最後に虹の翼を見た。




――――――




「何だろ、この紙の束は……?」

「さあ、わからないわ」


 その女は、天から舞い降りた紙切れを無視し、傍らにと立つ男にその身体を預ける。


「そんなことより、ねえあなた……」

「解っている、この前言っていたレストランだね?」

「そうそう!!」


 紙の束には何か文字らしき物が書かれているが、彼女らはその紙には一瞥もせず。


「何を食べようかな……」


 そのまま、足取りも軽くその場から立ち去る。

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