第11話「黄昏の空」
「最近、あいつからの手紙が来ないなあ……」
午前の当直を終え、しばしの休憩時間となったエドワードは、手紙を書くその手を止め。
「まあ、いいか……」
そのまま居室から出て、飛行艦セブレントの食堂へと向かおうとする。
ファウ……
外部通路に出た彼エドワードを一陣の風が包み込み、その風を受けながら彼は。
「黄昏の日か」
太陽がその姿を全く見せない、にもかかわらず高高度の空はオレンジ色にと薄く輝くその現象に、手すりにその手を置いたまま。
「変な光景だ……」
エドワードはしばらくの間、空にとその視線を向ける。
グゥア……
「うわ……」
その空の中、一匹の願い竜が異なる種のドラゴン、それを補食している光景がセブレントの上方で繰り広げられていた。
「願い竜、人の死のみを糧とするんじゃないんだな」
願い竜とそのドラゴンの光景は、セブレントよりも遥か離れた上空で繰り広げられているが故に、エドワードにも呑気に眺めてられる。
「願い竜、あれは一体何なんだろう……」
その願い竜が食い散らかしたドラゴンの破片が天から落ちてくるのをその目にしながら、エドワードは黄昏の時にしばしその身を任せた。
――――――
――今日、願い竜とドラゴンとの死闘を見てね――
夕食を終えた時間でもなお、黄昏が続く空を丸窓から眺めながら、エドワードは鉛筆をその手に握る。
――不思議な光景だった――
いつもは騒がしい同僚も、今日は夜の見張り当番の為に今はエドワード一人のみだ。手紙を書きつつ、彼には五、六人用のこの居室がやけに広く感じてきた。
――君も、この黄昏を見ているのかな?――
そう書きつつ、またしても彼エドワードは光に包まれた外を見やり、軽く息をついた。
――――――
その願い竜は荒い息を吐きながら、そのドラゴンの肉体、それの最後の一片を口にする。
クゥ、ク……
年老いて、虹色の翼の色もあせた願い竜、彼は先の縄張り争いで、若い願い竜にと敗北を喫したばかりだ。
チュ、ウ……
老いた竜の近くを、淡き黄昏にその身を包ませた、一匹の小鳥がヒラリと舞う。
――――――
「なあ、エドワード知っているか?」
「何だよ……?」
「この空域に、ガルガナー級の戦艦の姿が見えたらしいぜ」
「おいおい、まじかよ……」
その帝国軍が誇る大型戦艦の前には、このセブレントといえども太刀打ち出来るものではない。
「俺は、さっさと除隊したいっての」
「そんな台詞を艦長の前で言ってみろ、殴り飛ばされるぞ、エドワード」
「うるさい……」
そう、ややに力なく言うエドワードは、無意識の内に自らの懐にある手紙へとその手を触れる。
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