第95話 友達
「いいって。じゃあ友達になってくれよ。それでいいよ」
それを聞いてルマリオネはキョトンとしたが圭人は続ける。
「まあ、あれだ。こっちの都合で色々迷惑かけたからおあいこだな」
そう言って笑う圭人。
(一番厄介なパフパフするって約束がなくなったし、貰い過ぎは良くないな)
そう圭人が心の中で付け加えると、ルマリオネはにこやかに……聖母と見紛うばかりのにこやかな微笑みを浮かべる。
「欲のない方なんですね」
「いやまあ、欲はあるけどよー。そう言うのは嫌いなんだよ」
「そうなんですか? 」
「なんつーか……都合よく人を使うとその人に頼り過ぎちゃって一人じゃ何もできなくなる感じ? 甘えたくないんだ」
「自分に厳しいんですね」
ますます嬉しそうに微笑むルマリオネ。
(なに? 一体何が起きてるの?)
逆に不安になる圭人。
ルマリオネの機嫌とは裏腹に周りは完全に不穏な空気に包まれる。
(なんだこの「可哀そうな人を見る」空気? )
不安そうに辺りを見渡す圭人にルマリオネはにこやかに笑って右手を差し出す。
「わかりました。例えあなたが何回生まれ変わろうとも変わらぬ友情を誓うことで宜しいですか?」
「仰々しいな……いいよ」
そう言ってルマリオネの差し出した手に握手した。
「ではごきげんよう」
そう言ってすぅっと消えるルマリオネとガスカルド。
「「「「は、はぁ………」」」」
安堵の息を吐く他の面々を見てぽりぽりと頭をかいて周りに尋ねる圭人。
「みんなどうしたの? 」
「……動けなかったんだよ」
「……え?」
タマノの言葉に凍り付く圭人。
見ると全員が荒い息をしている。
中にはへたり込んでいる者も居た。
「全員動けなくなっていた。恐らくあのルマリオネの仕業だろうな」
「なんで?」
「余計な助言を与えられたくないからさ」
そう辛そうに唸るタマノ。全員が恐怖に顔を歪ませてへたり込む。
「タルキンはね。奥さんと合わせると最後に一つだけ願いを叶えてその後は永遠に現れないの」
「……そうなのか?」
イナミの言葉にきょとんとする圭人。
そのイナミも荒く息をしており、触角が力なく垂れさがっている。
「ただし、何も求めない者にはその後も幸せになれるように陰ながら手伝ってくれるとされる。その一方で欲深い者には最後の願いを一つだけ叶えて必ず死ぬと言われている。しっぺ返しを食らってな」
タマノがにやりと笑う。
「金を生む鶏を貰った者は殺されて奪われる。病気にならない身体を得た者は小さな怪我で死んでしまう。王の地位を貰った者はすぐに反乱がおきて殺されるとかね」
「必ず死ぬんだ……」
トカキの説明に圭人の背筋に冷たい汗が流れた。
「不老不死を貰った者は海の底に沈んでしまい、息が出来ない苦しみを味わいながら海底をさまよっているとも言われている」
「どう転んでもいい目には合わない」
「……そんなあぶねぇ選択だったのか……」
改めてゾッとする圭人。
「けどそうなるとさっきの約束はどうなるんだ?」
圭人は「友情」だけを求めた。
そして友情を約束した。
「どうなるんだろうね」
「いらないとはっきり言わなかったね」
「もらったとも言い難いな」
全員が議論を始めた。
困り顔の圭人。
「おれ……どうなるんだろ……」
「わかんない……」
ティカも圭人の隣で首を傾げている。
「おい! お前たち! 静かにしろ! それどころじゃないんだぞ!」
パンパンと手を叩くタマノ。
「迷宮の出入りが出来なくなったんだ! デビラが死ぬかもしれないんだぞ! お前らどうするつもりなんだ!」
それを聞いて全員が凍り付く。
そもそもデビラの救出作戦なのだ。
このままでは何もできない。
タマノがなおも叫ぶ。
「お前らには情が無いんか! あの子が可哀そうに膝抱えて震えとるかもしれんのやぞ!」
興奮のあまりに言葉が乱れ始めるタマノ。
「あの子がどこにおるかもわからんのに考えたことあるんか!」
「あ、あの……タマノ?」
激昂するタマノにそわそわと声をかけるアイナ。
「ケートを見ろ! 関係ないのに体張って助けてくれとる!」
「ちょ、タマノ……」
「それに比べてお前らは何やっとる!」
「あの……タマノ……」
「お前らに心が無いのか!」
「だから……」
「もういい! あたしが一人でも探す! お前らは帰ってろ!」
そう言ってタマノが叫んでバディルを着けようとした瞬間!
「ごめん! みんな!」
アイナの大声でタマノの勢いが止まる。
全員が拝み倒すように手を合わせるアイナの方を見る。
「実は………」
アイナこわごわと話し始める。
それを聞いて全員が呆気にとられた。
登場人物紹介
ガスカルドとルマリオネ
スケベで悪戯好きな夫のガスカルドと妖艶な美女のルマリオネ。
二人が揃ったときに迂闊な要求をするととんでもないしっぺ返しを食らう。
ただし、無欲を貫いた者だけが祝福を得られると言われている。
そして友情を約束した者には………
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