第94話 望む者


 圭人が外に出ると同時に目にしたのは瓦礫に座って怒るガスカルドの後ろ姿と口喧嘩するトカキだった。


「ふん! 約束が違うじゃないか! この嘘つきどもめ!」


 鼻をほじりながら偉そうにふんぞり返るガスカルド。


「絶対に認めないよ」


 そう言ってタマノの前で仁王立ちするトカキ。


「タマノがパフパフするなんて許さないから」

「あ、あのトカキ? 私は別に……」

「僕が許さない」

「ええと……」


 顔を真っ赤にしながら止めようとするタマノ。

 お尻の尻尾が嬉しそうにうねる。


 ガスカルドの後ろに圭人たちがいるのに二人が気づき、同時に圭人がガスカルドの肩を叩く。


「ガスカルド。パフパフしてくれる相手を見つけたぞ」

「なにぃ!」


 ぐるりと頭だけ180度回転してから体も回転させるガスカルド。


「気持ち悪い動きをするな。ちゃんとみつけたから、それも凄くでかいのを」

「本当だな! あんなまっ平で我慢しなくていいんだな!」


 タマノ指さすガスカルド。

 タマノの顔が般若に変わったが気にせずに話を進める圭人。


「この人だ」


 そう言って圭人が指さす方向を見るガスカルド。

 ガスカルドの動きがピタリと止まる。


「あんた~~~~~~!!!! 」


 ガスカルドを抱きしめてそのまま壁に激突するルマリオネ。

 ガスカルドは頭を強く打って失神している。


「もう離さないよ! 私の大事な愛しい人!」


 そう言ってキスの嵐をガスカルドに降り注ぐルマリオネ。

 それを見て唖然とする全員。


「奥さん……見つけちゃったんだ……」


 トカキが凍り付いてつぶやく。

 それを聞いて怪訝な顔をする圭人。


(なんか問題あんのかな?)


 気になっているとルマリオネがガスカルドを抱いたまま、こちらへと向かってくる。


(えらいアンバランスな夫婦だな……)


 片方は背も小さく、小太りの爺姿なのに片方は見るからに絶世の美女である。

 全身真っ白なこととポンチョをつけていることを除けば全く接点がない。


(まあ、妖精なんてそんなもんか)


 そんなことを考えているとルマリオネがぺこりと挨拶をした。


「ありがとうございます。おかげで主人に会えました」

「いえいえこちらこそ助かりました」


 そう言って圭人もぺこりと挨拶する。


「何かお礼をさせていただきたいのですが何がよろしいでしょうか?」

「え? お礼?」


 きょとんとする圭人。



「別にいいですよ。こっちも世話になったし」

「「「「「 !? 」」」」」

「え? なに? 」


 タルキン夫妻と圭人を除く全員が唖然とする。

 圭人はきょとんと周りを見渡すがタルキン夫妻は全く気にせずに続ける。


「そんなこと言わずに何かお礼を受け取ってください」

「いいって。じゃあ友達になってくれよ。それでいいよ」


 それを聞いてルマリオネはキョトンとした。

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