第73話 幽霊館の探索
「こう立て続けに依頼があると先輩に申し訳ないな」
うきうき笑顔で前回同様フル装備のハーマが幽霊館の前に立つ。
それを聞いて怪訝そうな顔をする圭人。
「何故ですか? 」
「私がこの部に入って5年は立つが一回も依頼がなかったし、行動することがなかった」
呆れる圭人。とはいえ、それほどぽんぽん起きる程のものでもないだろう。
これまでの行動から察するに遊ぶための部のようでもある。
「この装備も元をただすと部室に昔から保管されてた装備でな。いつか使おうと言いつつ埃をかぶっていたのだ。歴代の先輩が集めてきたが一回も使われることなくダメになるかと思っていたのだがこうして役に立つ日が来てよかった」
「役に立ってるんすかねぇ……」
そもそも本当に効果があるのか疑問がある圭人。
「私のこれも歴代の先輩が集めた奴ですからねぇ……私もハーマ先輩も買うのは服だけでしたからね」
やはりフル装備のイシュタがしみじみとつぶやく。こちらも歴代の先輩が集めたもののようだ。
(面白半分で買った道具が集まってあの形になったわけか……)
「あははは……」
それを見て乾いた笑いを浮かべるアイナ。
まさかまたこういったことが起きるとは思ってなかったのだろう。
「幽霊は嫌いなんだけどなー」
少しだけ不機嫌そうなイナミ。
「大丈夫。僕も一緒にいるから」
さりげなく自分の株を上げようとするエルメス。
だが、イナミの耳が完全に塞がっており届いているように見えないのはご愛敬。
一方で一人だけ不機嫌に顔を曇らせている者も居る。
「……………………」
その後ろでティカが珍しく不機嫌そうな顔でこちら睨んでいる。
怪訝に思った圭人が尋ねる。
「ティカ? どうしたんだ?」
「……別に」
ぷいっと明後日の方を見るティカだが、その様子にますます不思議がる圭人。
(なんだろ?)
何かヤなことでもあったのだろうかと不思議がるが後で話そうと思い、その場は濁すことにする圭人。
「まあ、めんどくさいし、居るとは思わんが探してみてくれ」
ちょっとだけ申し訳なさそうに言うタマノ。
「そういやこれって勝手に入っていいの?」
「別にいいだろ? 廃屋なんだし」
「思いっきり立ち入り禁止のマークがあるんだけど?」
幽霊館の入り口には立ち入り禁止マークのロープが張ってある。赤黄の不吉さを感じさせるマークだ。
「まあ、気にすんな。バレたら逃げればいい」
「ケート君。学術探求の前には些細なことだよ!」
「そうですよ!」
「まあ、良いけど」
タマノの言葉に同意するハーマとイシュタを尻目に立ち入り禁止マークをまたいで中に入る圭人。
「見つかったら連絡する。それまで存分に探検してくれ」
そう言ってタマノは立ち去る。後に残されたメンバーも順に中に入っていった。
「あそこからは入れるよ」
そう言ってアイナが破れた窓を指さす。
ちょうど駐輪場の屋根の上の窓が破れていて、楽に入れそうになっている。
「そんでこいつを持ってきて……」
アイナが近くにあった箱を置く。そうすると楽に駐輪場の屋根に上がれるようになった。
「よっと……」
軽く屋根に上がるアイナとそれに倣う圭人。
「アイナさんやけに詳しいですね?」
「前にもタマノと探検したから」
「あ~……」
ありそうだと圭人は苦笑する。
「前はトカキとタマノで夜中に探検したけど、途中でタマノが泣き出して断念したっけ。トカキが必死でなだめてたよ」
「え? ……そうなの?」
意外な事実に目を丸くする圭人。
「タマノはああ見えて怖がりなんだ。特にお化けとか苦手で全然ダメ。だけどトカキは信じてないから、ずんずん先に行っちゃうし……ああ見えてトカキも好奇心旺盛だから、嬉しそうに探検してたねぇ……」
「ひょっとしてここの探索任せたのは……」
「タマノが嫌いだからだよ」
にやにや笑うアイナ。ぴろりんっと携帯の音が鳴る。
「あ、私だ」
端末を取り出すアイナ。それを見てくすりと笑い端末を圭人に見せる。
『私が泣いてたことは言うなよ(怒)』
ご丁寧に怒りの絵文字を付けて送るタマノ。それを見てくすくす笑うアイナ。
「手遅れですっと」
悪戯っ子のように笑い、メッセージを入力して端末をしまう。
アイナはそのまま窓をくぐって中に入る。全員がそれに続いて入る。
「おわっと!」
「何やってんだよ……」
レイが窓の桟に足を引っかけてすっころぶ。
「大丈夫か?」
「問題ないです」
痛そうに立ち上がるレイ。
「外からでも見えるからみんな注意して。なるべく中の方を歩くようにしてね」
そう言ってずんずん歩くアイナ。一分ほど歩くと奥に入る廊下があり、そこを抜けるとホールに出る。
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