第67話 家庭の在り方
「それでも一夫一妻が普通でしたが、ブランディールのエニル制導入後は親戚縁者が集まって一つの家に住むのが主流になり、これがエニルという家の形に繋がったんです」
リュイ先生が端末をいじると白板の内容が変わる。
「このエニルは元々多夫多妻制であったブランディールの主流で何しろ男女とも好きにエッチして子供を作って良かったので単純に家族の枠に嵌めるのは難しかったのです。それで子供は氏族(エニル)の共同の宝と考え、氏族全体で育てるようになったのが始まりとされています」
白板には大き目のマンションが出てきた。
丸いドーナツ状のマンションで中庭では子供が遊んでいる。
「これがブランディールの普通の家です。一軒一軒がこの大きさなんです」
(……まじか? )
ぱっと見は五階建て50部屋前後のマンションである。団地一棟分ぐらいはあるだろう。
「この中に100人ほどが住んでいて、これが一つの氏族(エニル)を形成しているんです」
ざわざわ
一部の生徒にどよめきが走る。
ちらりとそちらを見てみると耳が翼だったり体に毛が多かったりする人に多い。
(……俺と同じ発展途上国からの移民か……)
実は動物的特徴を持つのは発展途上国の出身の証でもある。
混血が進み過ぎて身体に余計な特徴のない地球人のような「最混血人」が主流である。
(俺はまだいい方だからな~)
イナミの触角やティカの角はむしろ発展途上国の生まれの証で疎まれる。
(スミさんが夜の女してるのもその辺が理由だからなぁ……)
差別は許されないがそれでも差別は存在する。
特にわかりやすい特徴を持っている以上、ごまかしが出来ないのだ。
すると、金髪のもみあげがバターロールになってる少女が手を上げる。
「先生質問です。多夫多妻の場合はどこまでを家族と考えているのですか?」
「国によって違いはありますが主に『生んだ女性がどこのエニルに居たか?』が基本です。女性中心の考え方なので女性の側に入るのが一般的です。基本的にエニルは女系社会です。家長も女性がなることが多いです」
そう言ってある実例を白板に表示する。
生んだ女性がエニルに所属 → エニルに自動的に所属
子供の父親 → 入り婿になるか元のエニルに継続して所属
「簡単に言うとこういった形になります。もっともエニルによっては男が主体の所もありますのでケースバイケースといったところです」
リュイ先生はぷるんとオッパイを揺らして白板に次の話を進める。
(あれ絶対意識してやってるよな)
明らかに動きが不自然だった。
「ただ、このエニル形式には大きな問題があり、近親婚が増えることです」
次に出したグラフにはあるデータが出てきた。
「これは男女の初体験の相手のグラフです。まあ、ネットでもよく見かけるのですが、同じエニル内でくっつくことが多いのです」
リュイ先生はそう言って圭人の方を見てにやりと笑う。
「はい、そこ。期待するのは止めるように!」
「期待してねーし!」
圭人が抗議の声を上げるが周りはどっと笑う。
「タマノは筆おろししてくれるような奴ではありませんよ~♪」
「しかもそっちかよ! 期待する方がおかしいだろ!」
周りはどっと笑うがひとしきり笑った後でこほんと咳払いするリュイ先生。
「まあ、冗談はさておき、このように同じエニル内結婚が増えるので必然的に閉鎖的になり、遺伝子異常が増えます。そのため、昔からある仕組みを使ってきました。『祭り』です」
そう言ってある国の祭りの風景を見せる。
若い男女が歌と踊りに合わせて踊っている。
真ん中にはちょっとしたお立ち台があり、そこでは音楽を演奏している。
「エニルの中だけですべてが完結すると問題が起きやすいので常に外の人を招き入れる『祭り』を使って縁組させ、婿入り嫁入りさせたりしてきました。こうやって遺伝子異常を防いできたのです」
ミュオン
次に出したのは見覚えのあるものだった。身分証明書である。
自分の端末の中にも入っているがこの身分証明書はあるものの登録である。
「そして近代に入るとより合理的に近親婚を減らす制度を設けました。『遺伝子情報そのものを身分証にすればよい』と。これにより、戸籍なりすましなどの犯罪もなくなると同時に近親婚を減らすことに成功しました」
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