第66話 道徳の時間
学校生活は基本的にどこの国も変わらない。
とはいえ、国や土地、星ごとに時差年差というものがあるので、なんでも一定というわけにはいかない。
そのため、単位制を取っている。
単位の積み重ねで授業内容を決めてしまい、それに合わせて授業するのだ。
これは星や場所によって一年の日数や一日の時間が変わるので、国が決めた単位に合わせて就学内容を決めるのだ。
もっとも時間割を決めて日本の普通高校のような形で単位を取るので大学以外はわかりやすい。
とはいえ、例外的に選択科目がある。
これは人によっては取らなくてもいいのだが、ある種の人間にとっては必須の科目があり、これを取らなければ進学できない。それは……
「これで一通りの犯罪の説明は終わりですね……」
お色気女教師然としたリュイ先生が端末を動かして説明を始める。
周りにはいつもとは違い、他のクラスの生徒たちに交じって授業を受けることになる。
今やってる道徳の授業は一般常識を教える授業である。
銀河系(リガルティア)には万を超える国々があり、その国ごとに常識が変わる。
そのため、移民や在留外国人の子供達はこの常識の授業を受ける必要がある。
なにしろトラブルの大半がこの常識の違いからくるものなのだ。
知らなかったせいでうっかり犯罪をしていることさえある。
そのためにもこうやって授業することでなるべく問題を減らすのが目的である。
移民である圭人も当然ながら授業を受けなければならない。
尚、この道徳は受験科目にもなっている。
成績が良くても問題のある生徒を受け入れる程この世界の学校は優しくないのだ。
「今日はエニル制について説明しますね。エニルとは皆さんも知っての通り、家の事を指します。同時に家族や親類を指している場合もあります」
リュイ先生がそう言うと白板にエニルのイラストがでてくる。
「なにしろ万を超える国々がありますので家族形態も様々です。エニルで一番多いのは一夫一妻の親類型エニルですが、一夫多妻、多夫一妻、多夫多妻もあります」
イラストには4種類のエニルの形がでてくる。
「元々、ニューガン皇国は一夫一妻もしくは一夫多妻、多夫一妻のパターンが多かったですが、宗教上の問題で他国との軋轢が激しくなってきたのが要因です」
ここで圭人が手を上げた。
「一夫一妻、一夫多妻はわかるんですけど多夫一妻とは一体? 」
「昔は子作りが重要でしたのでお金持ちは一夫多妻が多かったのですが、その分、貧乏人は男があぶれたんです。だから多夫一妻と言う形で乗り切っていたのです。特に出稼ぎ労働者が集まる都会は男ばかり多くてが9:1の割合になることもあったのでそういった形を取っていたと言います」
「…………なるほど」
わかりやすい理由だった。貧乏では互いに助け合うしかない。子供が多くてもいいことは無い。
だから弱い者同士が寄り集まっていたのだ。
「それでも一夫一妻が普通でしたが、ブランディールのエニル制導入後は親戚縁者が集まって一つの家に住むのが主流になり、これがエニルという家の形に繋がったんです」
リュイ先生が端末をいじると白板の内容が変わる。
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