第52話 バイク事情
ケイオンに限らずリガルティアの町は道路幅が広い。
特にそれまで何もなかった場所に町を作るので土地が有り余っているのだ。
その割には走っているのはトラックかバスぐらいしかない。
重い貨物輸送車だけが地上を走るのだ。頭上では車が飛んでいる。
時折、車が降りてきてそのまま
圭人はイナミと一緒に自転車を漕ぎながらそんな様子を眺めていた。
「……これだけの技術力があれば自転車が安くて飛んでもいいと思うんだけどな……」
「免許がいるよ。空飛ぶ乗り物は落ちた時の危険が倍増するから。建物に落ちたら賠償が大変だからちゃんと免許持ってないと」
「……??? なんで? どういう意味? 」
「私もよくわかんないけど免許と保険がセットになってるんだって。だから事故った時の保証が最低限は受けられるようになってるんだって」
「なるほど! いい仕組みだな」
まあ、日本でもあるのだが保険に入らない奴が多いので、こういうシステムになったのだ。
こうするとペーパードライバーも常に保険料を払わなくてはならなくなるので保険料が安上がりになるのだ。
免許維持費もかかるので高等生は持たない子が多い。
「そう言えば圭人は懸賞金もらってたよね? 何に使うの? 」
先日の事件が解決したことで事件の賞金とブロムの繁殖法の発見の功績でお金がもらえたのだ。
さり気に今の圭人は高等生にしてはお金持ちである。
「実は地球に戻る費用にしようかなって思ってるんだ。向こうでしばらく生活する資金にしようかと……」
「……え? 」
イナミの触覚がカクンと下がる。
「ちょっと……いろいろやりたいことがあってさ。こっちで勉強したら向こうに戻ろうと思ってるんだ」
「……そうなんだ……」
悲しそうに答えるイナミ。
「地球は技術的に遅れてるからさ。なんかそれを打開したいんだ。俺たちの町は隕石で荒廃しちゃったからなんとか元気づけたいんだ」
「…………」
イナミは黙り込む。
「……ここは嫌い? 」
悲しそうに聞くイナミだが、圭人は笑った。
「楽しいから好きだよ。でも、やらなきゃいけないことがあるんだ……」
あいつらを助けるためにもと心の中で付け加える圭人。
圭人はイナミと並走して軽く肩を叩く。
「そんなにへこむなよ。まだずっと先の話だよ。ひょっとしたら10年先になるかもしれないことなんだ。今からへこんでどうすんだ? 」
「……そうだね」
そう言って笑うイナミ。そうこうしてるうちに自転車は見慣れた我が家にたどり着く。
圭人とイナミは自転車を車庫に置くと……
「あれ? 単車がある?」
見慣れない単車が置いてあった。
この時代の単車は一部の好事家の乗り物で、自転車よりは高価だがガソリンで動く。
免許条件も高等生以上で取れるので日本でいえば中学生でも乗れる。
とはいえ、車検や免許維持費などもあるのでそれなりに裕福な家(エニル)しか使わない。
「誰だろ?」
不思議そうに圭人が中に入ろうとすると先に戸が開く。
「あら?」
中からは青人モデル系美女アイナが出てきた。
用語説明
バイク
この世界にもガソリン式の自動車はある。
その関係でバイクも存在している。
その理由は免許とメンテナンスである。
空中を行く乗り物に比べて地上を走るしかない車は免許の取得条件も軽いので学生や一部の運搬業者が使うことが多い。
また、アウル式がどうしても浮遊する力が働く関係で、地面に固定する必要があるので、地面への固定が重量だけで終わるガソリン式は一部重宝される。
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