第25話 超法学研

「入るよー」


ガラリ


 ティカがそう言って超法学研の戸を開く。


「「「「アイヤーパッパラ! ホンダララッタ! 」」」」


 中では4人の女の子が煙を吹き出す壺の周りで変な踊りをしながら回っていた。


「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」


 ピシャン


 何も言わずに圭人が戸を閉める。

 全員が無言でお互いに見つめあう。


「ちょっと忙しいみたい……」


 ティカだけがぽつりと呟く。

 聞きたいことが違うと残る三人が表情で訴えるがティカには通じてないようだ。

 イナミとエルメスが肘で圭人に合図を送る。


(俺かよ! )


 心の中で突っ込みながら圭人が一歩前に出る。


「あーあのさ……いつもあんな感じ? 」


 圭人の言葉にふるふると頭を振るティカ。


「いつもはみんなで本を読んだりゲームしたりしてる。今日は男の子が来るから気合を入れてるみたい」


 どんな気合の入れ方だよと心の中で突っ込みを入れる圭人。

 するとがらりと戸が開いて中から踊っていた眼鏡の女の子が出てきた。

 凄く巨乳の女の子でぶるんっと巨乳がゆれている。


「ごめ~ん! ちょっとお菓子焼いてたんでバタバタしてるけど入って! 」

「焼いてたのは本当にお菓子? 」


 不安に駆られながら確認する圭人。


「お菓子ですよ~。マニクルを焼いたんです!今日はお客様が来るので気合を入れて焼きました! 」 


 嬉しそうに笑う女の子と微妙な顔つきの三人。


「さぁさぁ入ってくださいな! どんなお話も大歓迎ですから! 恋の悩みから人類の永遠の謎まで! なんでもお話しますよ! 」


 そう言って回り込んで退路を断とうとする眼鏡少女。

 すると中から他の踊っていた少女も出てくる。


「いらっしゃーい! 」

「待ってました! 」

「さぁさぁ中に入ってください! 」


 そう言って中に入れようとぐいぐい押してくる少女たち。

 その勢いに飲まれて4人は中へと入っていった。

 かちりと戸にカギをかけられた音を聞いて圭人は戸を二度見する。


(今、間違いなく鍵締めたよな? )


 逃がさない何かの布石が打たれたことに動揺する圭人。


「さぁさぁ食べてくださいな! 精魂込めて焼かせていただきました! 」


 そう言ってマニクルというクッキーに似た焼き菓子が前に出る。


「わぁ~美味しそうだねぇ……ほら! ケートも食べなよ」


 そう言って引き攣った顔でエルメスがマニクルを進める。

 そう言うエルメスはまだ一口も付けていない。


(このやろう……)


 ちらりとティカとイナミの方を見るがさすがに女の子に毒見をさせるのは悪かろうと圭人はマニクルを手に取って、恐る恐る口に入れる。


「……うまい」


 サクサクとしたクッキーで中は酸味が利いたしっとりとした口触りで美味しい。


「普通に美味しいぞ」


 そう言ってマニクルの入った容器を丸ごとエルメスの前まで持っていき……


「そんで今日聞きたいことはさぁ……」


 どんっと端末を前に置く。

 これでマニクルは自分の前に置けなくなった。


(まだまだ青い……)


 顔を青くしているエルメスを見てにやりとほくそ笑む圭人。

 すると眼鏡巨乳の少女はひょいっと端末を取り上げる。


「気に入って何よりです! もっと食べてください! 」


 どさりとさっきより大きい籠を圭人の前に置く少女。


「・・・・・・・・・」


 若干泣きそうになったがそこはぐっと堪えた圭人。

 諦めてマニクルをかじることに専念する圭人。

 幸いなことに右隣に座ったティカはその容器からマニクルを食べてくれた。


「……おいしい」


 ハムスターのようにかじるティカ。


 すると眼鏡少女は左隣に座り、ずいっと体を密着してくる。

 むにっと肉厚の柔らかいものが腕にくっつけられる。

 ちらりと横を見ると大きすぎて制服の胸のボタンが留められないのか、上の二つは外してあり、谷間がくっきり見えた。


(これはこれは♪ )


 思わず鼻の下を伸ばす圭人。


くきっ


 突然、首が真上を見るように誘導される。

 誰かに髪を鷲掴みして引っ張られたのだ。


「……頭が下がりすぎ。首によくない」


 なぜか髪を掴んでいるティカが不機嫌そうにつぶやく。


「うん。ありがとう……でもこれは逆に上向き過ぎかな? かえってよくないような「これぐらい? 」……ありがとう」


 首を丁度よいぐらいに整えてくれるティカだが、決して髪を放そうとしない。


(微妙に見えないなぁ……)


 しっかり見えていた胸の谷間が見えなくなり、心の中で涙を流す圭人。


「それでどのファイルですか~? 」


 眼鏡の少女が端末を手に取り、さらに覆いかぶさるように乗り出してきた。

 すると、今度は少女の体の動きがピタリと止まる。


「それなら、私が教えてあげる」


 眼鏡少女の肩に手を置いたイナミがぐいっと引っ張って少女の体を椅子に戻し、端末を取り返す。

 若干恨めしそうに眼鏡少女はイナミの持った端末を覗き込んだ。

 それを見てようやくティカが髪から手を放す。


「どうしたのティカ? なんで急にそんなこと「別に……」……まあ、いいけど」


 不機嫌になったティカがぷいっとそっぽ向く。

 いつも無口な少女の奇妙な態度に少し不思議を覚えた圭人だが、そろそろ本題に入りたいと話を切り出す。


「私はイシュタって言います♪よろしく!」


 眼鏡の少女はイシュタといい、緑髪の赤人少女で全体的に丸みの強い女の子だ。

 ティカと同い年で友人らしい。

 ほかの三人はといえば……


「エルメス君何でも聞いて! 」

「私こう見えて尽くすタイプなんだぁ……」

「何が好き? 私はホラー系好きかな? 」


 エルメスにくっついて口説いていた。

 三人ともやや大人っぽい美人で上級生らしい。


(まあ、いつも通りの光景だな)


 圭人はほっといて話を進めることにした。

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