第14話 最初の吸血鬼
アーカム連邦における学校の歴史は古いが共通点がある。
学校と寮が一体化していたということだ。
元々が研究機関から発達した物なので基本的に寮と一緒になるのが普通だったのだ。
泊まり込む生徒がいない癖に、学び舎に対して棟という言い方をせずに寮という言い方をしているのはその名残なのだ。
その寮には個別で専任教師が何人もおり、教師用の職員室もちゃんとある。
その職員室に3人が呼びだされた。
「まあ事情はわかったわ。そういうことは学校にも連絡してほしいわね」
「すいません」
リュイ先生に圭人が頭を下げる。
隣にはイナミとティカがいる。
「まあしかし困ったわね~。よりによってアルヴィス君が関わってきたか~……まあしょうがないか。彼の場合は吸血鬼に因縁があるからね~」
「因縁……ですか? 」
訝しげに尋ねる圭人。
「彼のご両親は探検隊だったんだけど、吸血鬼事件の容疑者にも上がってたのよ。何しろ最初の吸血鬼事件だったから肩身が狭かったみたいねー」
「そうだったんですか? 」
意外そうに言うイナミ。
「そうなのよ。そのせいで吸血鬼と勘違いされた両親はある日夜逃げしたそうよ。彼を置いてね。だから吸血鬼を憎んでるのよ」
そう言って机の上のゴミを捨てる先生。
気になってたようだ。
「だから、あんまり悪く思わないでほしいわね。彼もまた吸血鬼の被害者でもあるのよ」
「へぇ~」
そう言って端末をいじる圭人。
説教中に端末をいじり始めたので眉を顰めるリュイ先生。
「何してるのケート君? 」
「昨日、刑事さんから公開データ頂いたんでチェックしてみようかと……あった。ジェムズガン・ハリー。ハリーが姓なんだ」
「そりゃアルヴィス・ハリー・ポッターなんですから姓はハリーでしょう? ……ってそう言えば未開惑星から来たんでしたね。一応言っておきますけど、この場合はハリーが姓でポッターがエニル名ですよ」
「地球の風習と違うんで間違いやすいんですよ」
そう言って端末の情報を調べる圭人。
間違いやすいのは西洋にミドルネームがあるからだが、言うだけ時間の無駄と思って適当に答えた。
「一応、無罪は出てるんですね。公判中に別の吸血鬼事件が起きて無罪が証明されたって出てますね」
「そうね。けど、姿が違っていたから別の吸血鬼だったんじゃないかって言われてるわね」
「吸血鬼が二人いたかぁ……ん? 」
訝しげな顔をすると圭人は過去の吸血鬼事件を洗ってみる。
「そうなると……ちょっと変ですね」
「なにが? 」
「同じ吸血鬼が一度も世の中に出ていないことになりますね」
「……あれ? 」
リュイ先生が慌てて端末を覗く。
イナミも釣られて覗いてみる。
「ホントだ。一人も同じ吸血鬼が出てない」
美形という特徴はあるものの、全員が違う容姿をしている。
吸血鬼事件は一度起こると同じ吸血鬼による事件が続くが次の年には違う吸血鬼に変わっている。
「う~ん。変な話ですね……」
「代替わりしてるんですかね?」
気のない返事をするリュイ先生とそこが気になる圭人。
「でも続きは別の所でしてくれないかな? 先生ちょっと忙しいから」
「「「は~い」」」
「一応気をつけてね。アルヴィス君が血気に任せて何かやるかもしれないから」
「「「は~い」」」
そう言って職員室を出る3人。
職員室を出ると同時にエルメスが待ちかまえていた。
「どうだった? 」
「適当に話しただけ。でもちょっと収穫があったな」
「なにが? 」
「吸血鬼って同じ奴が出たことないんだよ」
そう言って端末を広げる圭人。
それをみんなで歩きながら見てみる。
だが、それを聞いて少しだけいぶかしむエルメス。
「でもこれは単に髪を切ったりしただけじゃないかな?ほら、みんな美形って書いてあるし、角も尻尾も無いから、いくらでも変われそうだよ」
「あ~そうかも」
容姿に関しては美形としか書かれていないので単に髪型を変えると同じような奴がちらほら現れて来た。
「意味がなかったかぁ……」
「ん~でも不思議な話だよね。なんでみんな『顔が綺麗』としか言わないんだろ?……なんか他の特徴があってもいいのに……」
イナミが不思議そうにつぶやく。
それにエルメスが答える。
「それは美人の条件が平均の顔だからだよ」
「平均って……美人の時点で平均じゃないよ? 」
「そうじゃなくて美人の顔は特徴が無いんだ。だからそれ以外に書きようがないんだよ」
全く納得がいかずに首を傾げるイナミ。
苦笑して圭人が答える。
「整ったというのは出過ぎず引っ込み過ぎずという意味になる。それは言いかえると平均的ってことだろ? 」
「あ~なるほど」
ぽんと手を叩くイナミ。
「じゃあ、吸血鬼は平均的な顔をモデルに変身しているってことかな?」
「まあそういうことになる……ん? 」
圭人は何か引っかかった。
(平均的な顔に変身している? )
圭人の心の中で何かが繋がろうとしていた。
(なんだ? ここまで出かかってるんだが……)
喉まで来て出てこないもやもや。
「どうしたのケート」
イナミが心配そうに顔をのぞかせるので慌てて下がる圭人。
「何でもない! なんかわかりそうな気がしただけ! 」
そう言って立ちあがるとティカが袖を引っ張っていた。
「どうしたの? 」
「朝は……ありがとう」
俯きながら恥ずかしそうに言うティカ。
それを笑って答える圭人。
「どういたしまして。また困ったら言いに来なよ」
「……うん」
恥ずかしそうにコクンと頷くティカ。
圭人はなんとなく恥ずかしくなり、慌てて声をあげる。
「今日は自転車取りに行くついでに花見にでも行こうや! 」
「うん! 」
そう言ってみんなで花見を楽しんでから圭人達は帰った。
登場人物紹介
リュイ先生
何故か堀○由衣に声が似てる赤毛巨乳の先生。
攻め攻めの露出の激しい服を好む。
BLが大好きでちょくちょくそれをネタにする。
ちなみにBL本はこちらにも存在するが同じようにニッチな趣味である。
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