第23話『拓馬の彼女・1』
里奈の物語・23
『拓馬の彼女・1』
どちらも骨董屋の孫だからかなあ?
「今からでも店番が務まりそうやね」
お茶を置きながら、おばさんが言う。
「なんでですか?」
「お店に入ってきたときの感じがね、シックリいってる。若いのに着物が似合うてるよみたいで、オバチャンとしては親近感やな」
「あたしは?」
「シックリいってなかったら、店番させたりせえへんよ。二人とも、こっち見て」
そう言って、おばさんはスマホを構えた。三枚撮ってもらって転送してもらった。
撮り方がうまいのか、おばさんが言う通りなのか、あたしも拓馬も、ここで生まれたように店に溶け込んで写っていた。
「春画のレプリカ置いてんねんな」
写メを撮ってもらった直後に女のお客さんが来て、伯父さんオリジナルのセットを買っていったのだ。
「うん、アイデアだと思う。本物は明治の錦絵でも高いし、いつも同じグレードのものを置いておくこともできないもんね。おばさん、お店いいですか?」
「うん、もうピークは過ぎたし。あ、お茶は入れ直して持ってたげるわ」
部屋に入った拓馬は、ちょっとよそよそしい。
「女の子の部屋に入るの、初めてやから……」
先手を取って言い訳をする。
「とりあえず、ごめんね。あんな帰り方して」
あたしも先手をとる。
「ううん、いきなりあんなゲームやったらビックリするよな」
「それは……」
とつないでみたものの、理由は言えない。
「付き合ってた子が、ああいうゲーム好きでなあ」
「え、女の子?」
「せや。カードとかゲームをやってるうちにエロゲにたどり着きよった」
「女の子が……」
「エロゲいうのは、春画と同じアート……ひょっとしたら、それ以上なんかもしれへんねん」
「そうなの?」
分かっていながら疑問形で返す。
「エロの表現だけとちがって、そこへ行くまでのドラマに工夫がある。ただエロいだけやったら、行きずりのエッチみたいで敬遠されるからな」
「拓馬も好きなんだ」
「うん、オレには挑戦やからな」
期せずして、拓馬の挑戦が分かった。
「彼女とは、いっしょにゲームしたりすんの?」
「ハハ、エロゲいうのは基本一人でやるもんや。それに彼女のことは過去形で言うたやろ」
「別れちゃったの?」
「うん……この春に死によった」
「え……」
また拓馬に飛躍されてしまった。
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