第10話 デミトリィ・アーヴィン
デミィは地下へ向かっていく。
殺戮を行うための手段が隠されているはずの場所へ。
黒衣の男達を屠りながら進む。
手がかりはなかったが彼には計算があった、大聖堂で始まった戦闘がそれを裏付けている。
街中で遭遇した軍服の兵士に銃を向けられデミィは彼に向けてマチェットを投げ、兵士に撃たれた銃弾を手にしていたマチェットで薙ぎ払うように弾き、兵士の背後にいた黒衣の男がデミィが投げたマチェットの直撃を受け天井に発砲。駆け寄ったデミィはその音で動揺した兵士の足を払い倒し手にした刃で黒衣の男の首を切り落とすと、空中に浮かんだ黒衣の男の頭に刺さったマチェットを引き抜き体勢を立て直そうとしていた兵士の首元に突き付けた。
「言ったろう、お前達で相手にできる男じゃないんだそいつは」
狐獣人の初老の士官オルウェンはそういうと銃の弾倉を取り換え闇の向こうの敵に照準を合わせる。
そこにはデミィの予想通り戦況が膠着し足止め状態になったオルウェンと彼の部下の兵士達がいた。
「僕が行く」
オルウェンの隣にしゃがみこみながらデミィが言う。
血まみれの彼の姿と臓腑の匂いに他の兵士が怖気づく中オルウェンはデミィを横目で見ると再び敵を見据える。
「死ぬかもしれんぞ」
「僕は死なない、それに誰も死なせない」
その言葉にオルウェンはニヤリと笑う。
「悪くないな、捨て鉢な奴に任せることはなにもないが、今のお前ならやれるかもしれん」
そう言ったオルウェンに兵士の一人が口をはさむ。階級章から部隊の隊長のようだった。
「部外者に頼っても良いのですか?本部の許可は」
「手段を選べる状態じゃない余計なことは後でやれ、責任は私が取る。私たちは彼の援護だ」
オルウェンはそういうとデミィに胸から取り出した地図と自身が手にしていた銃を押し付ける。
「地下聖堂
カタコンベ
だ、その地図の墓所にしちゃやけにでかい空間に連中が神像と呼ぶ何かがある」
デミィはマチェットの血をぬぐい一本を腰のベルトに差すと彼は敵の存在に臆せず立ち上がる。彼が立ち上がると同時に闇の奥から発砲が開始され、その弾丸がいくつか体をかすりながらも彼は視線を前に向けている。
「なにか計画は?」
そういうオルウェンに。
「全て破壊する」
そう言い残すとデミィは吸い込まれるように足音もなく闇の中に駆け出す。
闇の奥から一層激しさを増した悲鳴にも似た銃声が続くとやがてぷつりと途切れて静寂がおとずれた。
「さて行くか」
オルウェンはそういうと立ち上がりポケットをまさぐりタバコを咥えた。
「なっ危険です大佐!まだ敵が」
怯えた声の兵士に小さく笑いながらオルウェンはライターの火をつける。
「もういないよ。間抜けな連中だ、撃った光で奴に位置さえ知らせなければ死なずに済んだものを」
そういうと彼はタバコに火をつけ、紫煙をくゆらせながら進み始めた。
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