第83話 成長

 再び現れたミノタウルス。

 先ほどの個体より少し小柄。

 一度戦い方を覚えたらあとは早かった。


 巨大な体躯が豆腐のようにスパッと切られ絶命しながら消えていく。

 こんな現象が起こせるのもあの剣のおかげだ。

 訳の分からない切れ味を持っている明らかなオーバースペックの武器。


 それにしてもロイドの動きもかなり様になってきている。

 自分が言うのもなんだけど、剣の扱いがとてもうまい。

 もしかしたら自分よりもうまいかもしれないな……。


 そして、また1頭、地に伏し死に絶える。

 俺はときどき出てくる魔石のようなものを回収し、懐に集めておく。

 ミノタウルスの肉も素材になるようなのだが、残念ながら持ち帰ることはできなかった。

 今日はロイスがいないので、アイテム袋がないのだ。

 んー早めにそっちを買ってもいいかもしないな。

 幸いお金には少し余裕ができてきているし、明日にでも行ってみよう。


 ロイドがまた1頭仕留める。

 もはや流れ作業のようだった。


「お前……いや如月さん。 俺如月さんのこと誤解してたみたいです」

「なんだ急に気持ち悪いな……」

「奴隷買うような人はみんな俺たちをゴミクズのように扱ってぼろ雑巾のように使い捨てるんだ……です。 こんなすごい剣を渡してレベリングの手助けをしてくれるなんて思ってもみませんでした」

「如月さんはそんな人じゃないですよ! 命がけで私を救ってくれたんです!」

「少しずつフェリシアの言うことがわかってきたような気がする」

「俺もロイドみたいなやつと出会えてよかった。 だから、いっぱい強く会って奴隷たちを助けてやろう!」

「「はい!」」


 フェリシアは義足を用いた蹴り主体の立ち回りをしている。

 相手を攪乱し、蹴撃を加える。

 ほぼほぼ致命傷になっているが止めはロイドの斬撃で仕留める。

 だんだんと連携が取れだしてきているし、中々いい眺めだ。


 ギルドや城にあるステータス測定器があればもっといいのだけど、贅沢は言ってられないか。

 帰りにギルドに寄って測定してもらえばいいし。


「やああぁ!」


 ロイドがまたミノタウルスを倒す。

 魔石もいい感じに溜まってきた。

 激しい動きを繰り返しているので疲労もたまって来てるころかな?


 顎から滴る汗を袖で拭うと残りの一体の首を切断し絶命させる。

 雄たけびを上げる暇もなく床に倒れ伏すミノタウルス。

 ……もうこの階層だと敵にはならないな。

 そもそも最初から敵にすらなりえなかったんだけど。


 それくらい破格の性能を持つ武器だったからな。

 この武器をクラスの皆に分けてあげれば戦力の向上につながるかもしれない。

 ……とはいいつつもミスリルの武具があればあんまりいらないかな。

 飛騨に相談してみてもよさそうだ。


「そろそろ引き上げるか」

「如月さん、まだ俺動けますよ!」

「わ、わたしも……」


 フェリシアはやっぱりちょっときつそうだな。

 義足はマナを使って動かしているので、そのエネルギー源がなくなると動かすのが大変になる。

 いくら省エネだからといっても激しい動きをしているとその分だけ消費する。


「そんなに急いでもしょうがない、1日目だしな」

「如月さんがそういうなら……」

「わかりました……」

「これからギルドに戻って魔石の換金もしたいし、ステータスがどのくらい上がったのかも気になるし。 それよりもう俺がいなくても大丈夫そうな雰囲気してたな……」

「そんなことないですよ。 俺必死だったんで……」

「私も如月さんいないと怖いです」


 そりゃあいきなり場違いなところに来るとそうなるよね。

 俺もそう思います。


「じゃあ、帰るか」


 そう足を踏み出した瞬間、足にカチリとなにかのスイッチを押したような感覚が伝わってきた。

 なんか踏んだな。

 すると俺たちの周りに光輝く魔法陣が描かれる。

 ……え、なにこれ。

 どこかで見たような魔法陣だ。

 そうだ、ロイスといった二つ目のルート。

 あそこから飛ばされたときにみた魔法陣と似ているのだ。

 え? それってまずくないか?

 はやく、逃げ……。

 体が光に包まれていく。

 だめだ、間に合わない。


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