第46話 新しい武器
ロイスと別れた後、俺は街に出かけていた。
彼女の決心は悲しい気もするが、俺があれこれいう必要もないだろう。
俺たちにもやることはいっぱいあるし。
そんなことをぼんやりと考えながら街をぶらぶらと歩く。
もうすぐ戦争がはじまるというのに通りは人々が行き交い、相も変わらず賑やかだった。
「そろそろ俺を呼んだ理由を聞かせてもらってもいいか?」
「あ、そうだすっかり忘れてた」
隣を歩いていた飛騨が問いかける。
飛騨はクラスメイトの中でも人気の男子だ。
天然パーマのイケメンで、スポーツも万能、勉強もトップクラス。
まさに、絵に書いたようなパーフェクトヒューマンなのである。
いわゆる男の敵というやつなのだが、やはりそこは完璧超人の成せる技。
敵をも取り込み自分の味方に変えてしまう。
相当なやり手なわけだ。
「逆に聞こう、なぜ飛騨を呼んだのかわかるか?」
決して友達がいないから相部屋のこいつを呼んだワケではない。
もちろん男が好きとかそんな話でもない。
「えーっと。 なんとなくなんだが新しい武器が欲しくなったとか?」
「お前って本当に勘が鋭いな……」
そう俺は左腕が出来てからやってみたかったことがあったのだ。
二刀流というかっこいい戦闘スタイルだ。
自由自在に動くこの左腕。
実に素晴らしい。
せっかく出来た左腕を有効活用しなければもったいない。
「実はな、もう1本剣が欲しくて飛騨に目利きしてもらいたいんだ。 お前って妙に勘が鋭い気がしてさ、良さそうな剣見つけてくれるかなーなんて」
「あぁ、そうゆうことならお安い御用さ。 でも、如月の持っている剣も相当いいものみたいだぞ? それを超える剣となると簡単には見つからなさそうだな」
「それはそうなんだが……」
今現在持っているのは腰に掛けたミスリルの剣だ。
MPを注ぐことで綿毛のように軽くなる不思議な効果があったりする。
切れ味も抜群で鉄や石がスパスパと切れてしまう。
個人的にもこの剣は素晴らしいと思う。
筋力があまりない魔術師は剣を振るうのが苦手だ。
しかし、ここまで軽いとまた別の話になるわけだ。
もちろんミスリルの剣は高価な品である。
そのため普通の人は簡単に手に入れることすらできない。
この世界でも高いレベルにあるラウム王国の軍事力。
それをもってしても、聖騎士レベルの人しか保有をしていない。
勇者として召喚された俺たちにも配られたわけではあるが、二刀流にしたいからもう一本ください、なんてことはいいにくい。
そもそも二刀流にする必要性は皆無だし。
一応もう一つ理由はある。
右手はあまり筋力がないためミスリルの剣とは相性がいい。
しかし、左腕は違うのだ。
このアーティファクトの義手はMPを流すことで動かすことができる。
つまりは肉体的な力を使わずとも重い剣を自在に操れるようになる。
それなら重い剣でも使えるのではないか?
と、考えたのだ。
「……そもそも如月は剣がいるのか?」
「いやいやいるだろ? 二刀流はいいぞ」
「に、二刀流かい?」
「そんなものあんたに必要ないでしょ?」
飛騨の後ろを歩いている桜田が鋭いツッコミを入れる。
金髪ストレートのギャル系女子だ。
スマホをポチポチしながら歩いている姿を見ると元の世界なのかと錯覚する。
そもそも俺は飛騨しか呼んでないんだけど。
なんでこいつはついてきたんだ。
「なんでいるんだよ!」
「私は飛騨君についてきただけよ?」
「なるほどなー飛騨がいるならしかたないか」
「そうそうわかったらさっさと帰ってくれないかしら?」
「……いや、おかしいだろ!? てゆうかスマホやめろ!」
「スマホナカッタラワタシシンジャウカラー」
「なんで片言なんだよ!」
「まぁまぁ二人とも落ち着いて」
優男の飛騨は俺たちを仲裁してくれた。
まぁいい……。
飛騨に免じてここは引き下がるか。
「で、二刀流の話なんだけどなんか特別な理由があるのか?」
「かっこいいだろ!?」
「バカなのね」
「バカじゃない!」
少し考えた素振りをして飛騨は再び口を開く。
「ふぅむなるほどな。 如月はバリアが張れるから盾のような防具が必要なくなる。 防御が高いなら攻撃力をさらに高めたほうがよさそうだってとこか」
「そ、そうだ! それだ!」
「バカなのね」
「違うって言ってるだろ!」
飛騨が言う通り、俺のスキルならばそういう考え方もあるのか。
元々魔法を使うから剣での攻撃は趣味みたいな感じかなって思ってた。
とりあえずかっこよくて、使いやすければ良かったのだ。
しばらくこんな掛け合いが続き、気づいたらアリオーシュに教えてもらった区画についた。
ダンジョンやデモンズロードではたくさんの魔物が出現する。
魔物たちを効率よく倒すためには武器や、身を守るための防具が必須だ。
冒険者や王城の人たちはよくここの区画の店を利用しているらしい。
ポーションや薬草などが売っているアイテムショップ。
魔法が秘められたスクロールのショップ。
様々な特殊効果を付与されるアクセサリーショップなどいろいろな店がある。
その中でも看板に剣のマークがついている店を見つけた。
「たしかアリオーシュの行ってた店はあれだな」
「役に立てるかわからないけどとりあえずいってみようか」
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