第11話 レベリング準備
目の前で起こったことが信じられなかった。
世界の法則が元の世界と異なっている。
本当にただ敵を倒すだけで強くなる?
これが真実であれば、俺はさらなる高見を目指すことが可能だ。
しかも、今魔法を放った感覚からすると間違いない。
今まで蓄積した現代魔法の知識と技術、加えてこの異世界の謎の法則が合わされば……。
もしかしたら誰も到達できない力を手に入れることができるのではないだろうか。
例のアーティファクトで測定した値を再び読み返す。
■称号
・落ちこぼれの魔法使い
■ステータス
・レベル:3
・体力 :143
・MP :7
・攻撃 :113
・防御 :73
・素早さ:123
・魔力 :10434
■スキル
・バリア
・魔力操作
元々はレベル1だったので、少し敵を倒すだけで2つレベルが上がっていることになる。
最も注目すべきところはMPだ。
今まではどうすることも出来なかった要素が成長している。
初期はMP1だったので7倍に。
その他の項目は割とどうでもいいところだが、各種ステータスもそこそこ伸びている。
下地と末永に比べればしょぼさを感じるが、元々インファイター向きじゃないしな。
そこはしょうがないところだろう。
少し笑うところは魔力の伸びが他のステータスに比べて10倍くらい高いことだ。
レベルが2つあがるだけで334も上昇している。
元々やばそうな雰囲気があったにも関わらず、この成長率は異常だと言わざるを得ないぞ。
今までやってきたことが無駄ではなかったのかもしれないな。
興奮していた感情が徐々に収まってきた。
今起こった現実を反芻する。
劇的な変化が訪れた今、のらりくらりと過ごそうとしていた心境が徐々に変化していく。
自分はどこまで成長することができるのか、限界はどこまで伸ばせるのか、湧き上がる期待が止まらない。
ただ、急に城を抜け出して、はいさようなら! というわけにはいかないだろう。
情報が少ないからな。
待遇がいい城の生活もそこまで嫌いじゃない。
であるならば慌てず今の流れに合わせ、情報を集める。
隙をみて経験値を効率よく手に入れる手段を模索するのがいいだろう。
大体はこんなところか。
真っ赤な恒星が徐々に地平の果てへと吸い込まれていく。
俺を追いかけてか末永が屋上へ追いかけてきた。
「もー急に走り出したからびっくりしちゃったよ」
「あぁ……ごめんな。 ちょっと驚いてしまってだな……」
小動物のような無垢な瞳とちょこんとした角がかわいらしい。
しっぽをふるふる振るいながら、こちらに距離を詰めてくる。
犬みたいだな……。
「そんなにひどかったの? 計測結果?」
「……そうだな」
正確に言えば逆の意味でひどい状態ではあるな。
期待を見事裏切ってくれた。
元々期待されるようなステータスを見せていたわけじゃないし、そう思われるのも無理ないだろう。
「下地と末永のステータスに比べてあまりにひどくてな……思わず飛び出してしまった」
「やっぱりそうだったんだね……。 私も少し張り切りすぎて如月君の分とっちゃったし……」
申し訳なさそうにうな垂れる末永。
適当にやってたこちらも悪いんだけどね。
「ロイスさんも言ってたけど、明日からはみんなで協力してダンジョン攻略しよ! 下地さんにも相談してみる!」
「末永はいいやつだなぁ……」
急に異世界につれてこられて大変なはずなのになんていい子なんだ。
こういう人たちを見捨てないためにも現状把握が必要だ。
いざとなれば俺が守ってやらないとな。
その後、元いた部屋に連れて行かれ、ロイスに怒られたのは言うまでもなかった。
*
今日の晩御飯はとてつもなく大きな魚だった。
食堂の机の上にどでんと置かれている。
頭の先からしっぽまでは2mくらいはありそうだ。
皿も特大のもので今まで見たこともない大きさだった。
各自、思い思いに身をほぐし自分の皿に盛っていく。
ビュッフェスタイルな感じだ。
謎の魚だったけどしっかり身の中心まで火が通っておりほくほくしておいしかった。
異世界すげぇな。
あとは主食にパン。
パンばっかりだと少し飽きてくるけど、これは仕方ないか。
さて、今日の用事はほぼすべて完了だ。
しかし、俺にはやらねばならぬことがある。
そうレベリングだ。
恐らく下地と末永のペースに合わせていると効率は悪いだろう。
討伐速度という点では特に問題はないんだが、階層を進むスピードが遅すぎる。
俺は今後のスケジュールを組み立てていく。
夜寝る前まではダンジョンにこもるのは確定だろう。
簡単に魔物を討伐できる。
願ったり叶ったりだ。
ときどき図書室での情報収集も続けたい。
あとはもっとダンジョンの情報を知りたいところ。
一応5階層ごとにセーブポイントみたいなクリスタルが配置されているらしく、それにアクセスすることで出口のクリスタルまで転移ができる。
当然、今日のダンジョン探索も5階層まで降り、そのクリスタルから戻ってきた。次に探索する場合は到達地点が登録されており、クリスタルから進行度に応じた階層まで転移できるとのことだった。非常に便利だな。
ダンジョンマップみたいなものもあるみたいだが、訓練だということで俺たちには渡されなかった。効率を考えるならぜひとも欲しいところである。
あとはお金も欲しい。
ダンジョンを探索する時の食糧や物資を調達するためにはどうしても必要になるだろう。
王城の人に頼みこんでもいいのだが、あまり大題的に知られたくはない。
強いとわかれば利用されるのがオチだ。
方針が大体決まってきた。
まず、ロイスが話していたギルドという組織があるようで、そこに魔物から取れる素材や魔石を持っていくとお金がもらえるのだそうだ。
これを利用しない手はない。
人も大勢いるそうで色々な情報を手に入れることも出来るだろう。
ちなみにゴブリンやスライムは大した素材を持っていないためアイテムを回収するということはなかった。
時間は19時を少し回ったところ。
クラスメイトは各々、好きに時間を過ごしている。
大浴場に行って今日の疲れを癒している者、談話室で今日の出来事を面白おかしく語り合ってる者、三者三様である。
そんな彼らを横目に夜の街に出かけるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます