第12話 かっこよさ
私は、喫煙者として10年過ごしてきました。以前も申しましたが、吸い始めたきっかけは「かっこいい」と思ったから。学生時代の友人も同じ時期に同じ理由でタバコを始めました。
この「かっこよさ」に関して少し細かく分析すると、
大人の仲間入りが出来る気がした
ちょい悪な感じがした
と、ありがちなイメージも持っていましたが、
ただ単に、他の人が吸っている姿がかっこよく見えた
という事もありました。
吸い始めた当時の動機を考えると少し幼稚な感じがしますが、一番初めの一本を吸い始めた動機は、こんな感じでした。
その友人は、もしかしたら「かっこいい」の他に、勧められたからという動機かも知れませんが、やっぱり根底には私と同じように「かっこいい」と思っていたのだと思います。当時、アニメのかっこいい主人公は、タバコを吸っていた様な気がしますし、時代がそういった時代だったのかも知れませんが、お互い吸うことが「かっこいい」と思っていました。
そんな友人と今年になって、実に10年振りに会いました。妻の仕事の知り合いの店がその友人の店で、その店に妻が行った時に私の話になったらしいです。そんな事があり、ふらっと店を訪れる事にしました。
彼は喫煙者のままこの10年を過ごしていました。正直、想像よりも老いていました。年の割に白髪もあり、何より肌が薄暗く感じました。喫煙者の頃、タバコを吸うと老いてくると良く聞きましたが、正直実感はありませんでした。当時若かったからかも知れませんが、自分自身も友人も老いを感じてなく、脅しの類としか理解していませんでした。
時は経ち、10年の時が空き改めてその言葉を思い出すと、きっとそれは本当なんだと思いました。彼の老いが全てタバコのせいでは無いとは思いますが、もしかしたら、タバコを吸うとその人は、周りより早く時が進み、少し大人になるのかも知れません。
大人に見えると言うのは、もしかしたら本当に少し時が進み、大人になっているのかも知れません。
少しファンタジーになりましたが、そんな時が進んだ彼が吸っていたタバコは、昔私が吸っていた煙の出るあのタバコでは無く、黒い箱の中に差したまま吸う形のタバコを吸っていました。
あの嫌な臭いとヤニは感じ無く、非喫煙者になった私から言っても、タバコの悪いところが無くなった様な実に画期的な製品に衝撃を受けました。そう感じる私はまだ、タバコをやめきれてないのでしょうか?
しかも、タバコをやめた時にあれがあったのなら、もしかしたら続けていたかも…っとそう思ったりもしました。製品的には素晴らしいものだと感じましたが…タバコを吸っているその姿はタバコを吸っていると言うか、ちっちゃい栄養ドリンクを飲んでる姿に見えてしまいました。
少なくとも私にはそれが「かっこいい」とは思えませんでした。
私には、火の付いてるタバコをくわえる仕草であったり、火を付ける瞬間の仕草のところが一番格好良く見えており、特にZippoとか火を付ける何かは大好きでした。友人ともZippoを見せ合ったり、時にはマッチを使うレトロ感に酔いしれた時期もありました。マッチをパチパチパチパチっとするアレは、仲間内で流行りました。きっと、同世代の喫煙者の皆様は一度はやった事があるのではないでしょうか?
しかし、10年ぶりに見た彼の吸っている姿は、かっこよさを求めて初めたタバコのイメージとは少しかけ離れていました。あのタバコなら、私はやめれてなかったかも知れませんが、そもそも吸いはじめて無かったと思います。火を付ける動作も無いし、「かっこよさ」が、物足りなく感じました。
きっと、タバコを吸い初める動機は、「かっこいい」であっても、吸い続ける動機は「かっこいい」では無くなるのでしょう。
動機さえも変えてしまうほどの依存性がタバコにはあります。そんな依存性があるタバコを、意思の弱い私がどうやってやめれたか?というと。。。
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