四の九

 真っ先に紫が切り込む。

 拳と脚の打撃を間断なく繰り出す。

 カシンは攻撃をさばいていたが、やがてさばききれなくなってきた。

 紫の拳が、カシンの頬をかすめる。

 直後に打ち出された紫の左の拳をカシンはかわすと、紫のみぞおちに膝蹴りを入れる。

 前に折れた彼女の背中に、肘を叩き込む。

 紫は地面に叩きつけられた。

 と、カシンの背後から、黄色い閃光が走った。

 弧を描いて打ち下ろされた小町のチョップが、カシンをとらえた。

 かに見えたが、それは残像で、カシンは小町の背後に回り込み、回し蹴りを放った。

 だが、その脚は小町のすり抜けた。

 残像と気づくと、後ろに気配を感じ、振り返りざまに正拳を突く。

 だが、拳が小町を突き抜けた。

 再び残像と気づくと、まわりに数人の小町が囲んでいた。

 カシンは回し蹴りを一回転させて、分身を消滅させる。

 直後、起き直った紫が、再び攻撃に転じた。

 数秒間のパンチとキックの応酬。

 ふっと、紫が身を沈める。

 それに釣られて目を下へ動かした瞬間。

 斜め上空から、腕に高濃度のアルマをまとわせたあぐりが襲撃してきた。

 まともに頬にアルマパンチを喰らい、カシンは吹っ飛んだ。

 二十メートルほども転がって、起き上がる。

 追って紫が突進してくる。

 パンチとキックの連打。

 カシンはさばく。

 紫が下がる。

 小町が横合いから割って入る。左右の平手突きを凄まじい速さで連続して放つ。

 その突きは、まるで刃物のように空気を切り裂く。

 カシンは避ける。

 小町が残像を残して引く。

 その残像を粉砕するようにあぐりが突撃してきて、アルマをまとわせたパンチを放つ。

 今度はカシンは受け止めた。

 カシンが攻撃に転じようとすると、あぐりが横へ飛びのく。

 紫が現れ、渾身の正拳突きを繰り出した。

 気合とともに繰り出された拳が、カシンの頬を打つ。

 のけぞるカシン。

 その、夜空を見た視界に、小町の姿があった。

 三十メートルほど上空の小さな姿が、腕を振る。

 すると、いくつものつららのような形状をした岩が、落ちてきた。

 カシンは避ける。避けたところに、またつららが落ちてくる。そうして、いくつものつらら岩を、カシンは避け続ける。

 やがて、周囲は粉砕された岩が巻き上げた粉塵に包まれた。

 カシンは、小町のいた場所へ見当をつけて飛び上がった。

 土煙を突き抜けた。

 だが、その空間に小町の姿はない。

 十メートル先に、両腕を突き出したあぐりがいた。

 その両てのひらが、ピンクに光る。

 打ち出されたアルマの光弾が、カシンに命中する。

 だが、カシンは両腕で防御した。

 光弾がはじける。

 ところへ、

「おりゃあっ!」

 飛び上がってきた紫が、パンチを出す。

 カシンは、顔面に攻撃を喰らい、地上へと落下する。

 待ち構えるように落下地点にたつ小町が、

「そおれっ!」

 キックを放つ。

 蹴られたカシンは、真横に吹っ飛ぶ。

 その正面からあぐりが突っ込んでくる。

「くらえっ!」

 あぐりのパンチがカシンのみぞおちに打ち込まれた。

 カシンは飛んできた軌跡をなぞり、ふたたび吹っ飛んだ。

 五十メートルほども吹っ飛ばされ、地面に激突した。

 すぐにカシンは跳ね起きた。

 三十メートルほどの間合いをとって、三人の少女がカシンを囲む。

 カシンは腰を落とし、全身に力を込めた。

「うおおおおおっ!」

 黒いオーラが噴出し、膨張していく。

 カシンが両腕を前方に突き出す。

 そこから、竜の形状をしたアルマが打ち出された。

 そして、両腕を左右に広げる。その両手からも、竜が撃ち出される。

 三匹の竜が、あぐりたちに向かって走る。

「うおおおおおっ!」

 あぐりは叫んだ。そして、両手を前にのばしてアルマ弾を発射する。

「うおおおおおっ!」

「うおおおおおっ!」

 紫も小町も、気合の叫びとともに、アルマ弾を放つ。

 三つ首の竜と、ピンクと、青と、黄色のアルマエネルギーがぶつかり、せめぎあった。

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