可愛い子を見るだけで鼻血が出る、そんな俺がハーレムをつくって貧血です 〜異世界で出会ったケモミミ少女達は“俺の血”で最強になりました〜

シロノクマ

一章〜出会い編〜


 彼は酷く苛立っていた。それは、突如として訪れ、彼の——剣崎獅童の身に異変をもたらしたのだ。


 視界が歪む、頭はその中身を掻き回されたように混濁しており。例えるなら、粗悪な酒を一晩中飲み続けた明くる日の胸の悪さを何倍にも嫌な感じにしたような。


「よくぞ参った! 異界の救世主よ————」


 誰かが、何かを叫んでいるのが聞こえる。獅童は混然とした意識を振り解き周囲に視線を向ける。見慣れない建造物、先程までとは違う場所。


「其方は我々によって召喚されし救世主!! 余にその名を————」


 見慣れない服装の人間——白いローブを着た者が数名、獅童を囲むように立ち。正面には、腰に今時あり得ない物騒な獲物を堂々と下げ、鋼の鎧で全身を武装した時代錯誤な格好をした人間を両脇に従え、不遜な態度で踏ん反り返り、耳障りな声で捲し立てている小太りな男。その出立は、中世の貴族を思わせるような酔狂としか思えない服装に分かりやすく冠を頭に乗せ。


「何か申さぬか!! それとも言葉がわからないのか!?」


 訝しむように獅童を見据える小太りな男、その頭に響く不愉快な声に、獅童はその鋭い双眸を細める。状況は把握した。

 獅童は思考を走らせ、今から起こす行動を予測しイメージをフルに稼働させる。人数、対象の位置。武器は無い、相手は武装しているが見る限り腰に携えた時代遅れな剣だけ。相手の要求は依然として不明、正体も不明。


 だが、そんな事は獅童に関係のない事であった。そして、身体の感覚を確かめる。異常はない、意識が段々と正常に可動し始め、改めてわかる感覚。獅童は自身の身体が普段以上に躍動している事を感じ取っていた。

 改めて獅童は、物言わぬ相手に憤慨寸前の男を鷹のように鋭い眼光で見据え。両サイドを刈り上げ獅子のたてがみのような茶褐色の髪をかき揚げる仕草を見せ。


「言語理解の魔法はかけておるのか?!」

「はっ! こちらの言葉は通じているものと思われます」


「ふん、良かろう……余は、このエルサール王国、国王! ドリュふぁぺ————」


 一瞬、その場が静寂に包まれる。周囲の兵達は一体何が起きたのか、あまりにも想定を超えた事態に反応出来ずその思考を停止させ。

 目を見開き、その視界に映り込んだのは異界から召喚した男が獰猛な獅子の如く、刹那の間に自分たちの間をすり抜け、自国の王————その顔面に肘をめり込ませていた。


「「「——————!?」」」


 あまりに衝撃的な光景を目の当たりにして、硬直する兵士。獅童は不遜な男の顔面に肘を打ち込んだ直後、脇に立っていた鎧の兵士の一人、その首を刈り取るように回し蹴りを放ち頭部を地面へと打ち付け。天地が逆転した兵士の腰から剣を抜き放ち————国王の近くにいたもう一人の兵士、こちらは鎧を纏っておらず外見的な出立ちは地位のある騎士といった風体で。獅童は躊躇なく、身構えようとしていた騎士の心臓目掛け、躊躇なく刺突を繰り出す。


「——っち」


 容赦無く放たれた刺突は、瞬時に抜かれた剣の腹で見事に受け止められ、漏れた獅童の舌打ちと共に甲高い音を響かせ騎士の男は大きく後方へと飛び退いた。


 獅童はその鋭い眼光を一瞬で辺りへと廻らせると、鼻から血を垂れ流す国王の襟首を掴み引き起こす。

 そして、盾のようにその小太りな身体を自身へと引き寄せ、首筋へと剣をあてると。


「よし、全員動くな。とりあえずお前らがどこの誰で、どんなヤバイ連中なのかは知らんが、俺を解放しろ」


 張り詰めた空気の中に低く冷静に、獅童の声が響き渡るのであった。

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