第22話 大学1年生3
大学の夏休みは長い。
高校までのように課題もない。
バイトにも少しずつ慣れ、話せるバイト仲間もできた。
バイト終わりに遊びに出ることも多くなり、帰宅はいつも夜明け後。
高校までは厳しかった母親もそこまで煩く言うこともない、自由な生活が続いた。
彼女彼氏持ちが少なくないバイト先であったので、俺に対してお節介をやいてくる人もいたが、強がりではなく本当に当時の生活には満足していた。
中学までは部活一辺倒、高校は勉強ばかりで周囲より友人付き合いがないことくらいは自覚していたこともある。
夏休み中に大学の仲間や先輩と会う機会もなかったし、元々地元は地方大都市、大学は田舎隣県ということもありわざわざ休み中に行く気も失せていた。
夜遊びを覚えたけれど、大半は居酒屋呑みが多くカラオケ等は断っていた。
というのもカラオケは色々な理由で苦手であった。
大学入るまでにカラオケに行ったこともない、歌もそんなに知らない(ユーロビートやダンス、ハウス系が好きだった。)、そして一番の理由は音痴であることを自覚していたためであった。
カラオケに行く流れになると何かにつけて帰宅していたのだが、ある日断りきれずにカラオケへ・・・
皆意気揚々と歌い出す、あれもこれもテレビでは聞いたことあるけれどよくわからない。
そうこうするうちにどうしても一曲入れろという流れに逆らえず恐る恐る予約して歌うことに。
わかる、俺にはわかる。
明らかに部屋のテンションが変わったことを・・・
それでも合いの手を入れてくれたりしてありがたいという気持ちと、無理矢理盛り上げさせる手間に対して申し訳ない気持ちで一杯であった。
その夜、俺がさらに歌うことはなかった。
結果は歌う前からわかっていたが、いざそうなると・・・これが初めての挫折感であった。
しかしそれからも付き合いは薄れることなくバイト生活は続き、いよいよ夏休みも終わり大学生活が復活するはずであった。
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