第20話 大学1年生1
学生委員会の部室と呼ばれるスペースに飛び込むと、「推薦合格者の集い」で顔見知りになった先輩が偶然いた。
あちらも覚えてくれていたようで、すぐに溶け込むことができた。
学生生活に慣れたか?
何かわからないところは?
とても親切で色々と相談に乗ってくれた。
一通り話したところで
「あの、俺もここで活動してみたいんですが」
と切り出す。
隣にいた先輩女子が
「正直辛いこともあるし、バイトやプライベートに制限がかかること(繁忙期)もあるのけどそれでも良い?」
と言ってきた。
これが逆に好感を持てたので即答で学生委員会の一員となることになった。
たまたまその日の夕方から週1回開催される「部会」というものがあるので参加してみることに。
既に数人の新入生もいて、大袈裟に言えば「志同じくする者」として親近感もわき、すぐに会話は弾んだ。
部会が始まると第一印象は「まるで生徒会みたいだな」
後日行われる企画(例えばスポーツ大会)の進捗状況の確認・報告や過日開催された企画の反省点の抽出等、言われたとおり「楽しい」とは思えない雰囲気であった。
休憩を挟み2時間くらい「部会」は続き、終わったところで「それじゃ飲みに行きますか?店どーする?」
となるのが恒例だそうだ。
この日は自己紹介も兼ねて参加の意思を示した。
行った居酒屋は客の大半が学生であった。
先輩達は手慣れた様子で着席し取り皿や箸を取り分ける。
よく見ると下の学年が率先してやってるように見えたので俺も見よう見まねでやってみる。
ある先輩からは「お前中々動きが良いな」とも言われた。
そうして飲み物の注文となるわけだが、幹事役っぽい先輩がおもむろに人数を数えだしたかと思ったら店員に
「とりあえず生を15杯!」
と言うではないか。
数えてみると確かに「俺を含めて」15人であった。
飲み物が生ビールしかないのか?とメニューを覗いてたら隣の先輩が
「ウチらはビール日本酒焼酎以外は飲まない飲ませないのよ」
と囁いた。
参ったな・・・日本酒や焼酎はまだ飲みやすいけどビールは苦手なんだよな・・・と思いつつも乾杯となりとりあえず一口つける。
すぐに酒に強そうな先輩はジョッキが空きそうになっている。
すかさずその先輩の分のビールを注文する若手・・・
何というコンビネーションなんだと呆然としていると
また先輩から
「貴方全然進んでないね、酒飲めないの?」
と迫ってきた。
飲めない訳ではないがビールは苦手だ・・・というニュアンスで答えると
「もう焼酎いく?」
と声を出したかと思えば別の先輩が
「まだ一杯しか飲んでないぞ!誰だ?」
そこで
「このコがビール以外なら飲めると言うので」
とフォローが入ってたかと思ったところに
「君名前は?」
と聞かれたので答えた瞬間
「◯◯(俺)のカタキは△△(先輩)が取るぞ!△△♪飲める♪無理は♪承知!!ハイッ!飲めば飲むほど良い男!泣かせた女は数知れず!ハイッ!パーリラッ♪パリラパーリラッ♪ハイハイ♪」
何だこの呪文は・・・そう今では絶滅危惧種の「イッキコール」であった。
あっという間にその先輩は飲み干し、即座におかわりを注文していた。
ビールは無理だけど焼酎ならできそうだな・・・と呟いたのか顔に出ていたのかは忘れたが、先輩から
「お?◯◯君もやってみる??」
と煽られたので、焼酎か日本酒なら・・・と答えると周囲がざわついたところにまた新たなイッキコールが始まりいつの間にか用意された焼酎だったか日本酒だったか忘れたが水を飲むように一気に飲み干した。
この時の拍手喝采は中々気持ち良かったので、その後飲み会が終わるまで何杯かは一気に飲んだ。
それにしても驚いたのは飲む量というよりもイッキコールの種類の多さだ。
勿論手拍子についていくのがやっとであったが、これ覚えて活用できたら楽しそう・・・と思ってしまった。
今ならそんな馬鹿みたいな飲みしてアホくさって思われるんだろうが。
そんなこんなで飲み会も終わり、最終特急にも間に合う時間なので帰ろうとすると、先輩が「二次会行くぞ二次会!」と声をかけてきた。
終電があることを伝えると「今夜は俺ん家(下宿)に泊まれ!」と言われて半ば強制的に二次会に参加→泊まることになった。
吐くほどは飲まなかったが完全に酔っ払ってたのはわかる。
それが証拠に翌日も講義があるのに帰宅もせず外泊することになったのだ。
当然のように翌日の講義は全てサボることになり、早くも「自主休講」ということを覚えた。
まだ自分の履修割すら完全に覚えてないのに・・・
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