第16話 大学入学まで1

さて大学の入学式まで1ヶ月

隣県なので通学するため特に準備することもなく、さらに暇になるなと思っていた。

博多駅~佐賀駅まで特急定期学生割引で月4万円だったので、俺も通うつもりだったし親も一人暮しよりは金がかからんということで通学することになった。


もう俺を束縛する高校の存在もないので、思い切ってアルバイトを始めることにした。

1ヶ月の短期で俺でも雇ってくれるところ・・・うーん接客系は苦手だしなぁ・・・お?土木作業員日給9,000円!これだ!これなら俺にでもできそう。

ということで面接に行くと、いきなり「明日から来られる?6時までに作業着で来てくれ。」と言われ面食らう。

募集要項には「8時~17時」って書いてたのに??

まぁとりあえず初日だし色々説明があるのだろうと勝手に解釈し、ホームセンターで作業着と軍手を購入した。


高校の時よりも早起きとなり、真新しい作業着に着替えて自転車で「初出勤」

「おう、よく来たな。その格好で十分だ。そこにあるヘルメットを持って向かいにある軽バンに乗ってくれ。」

いきなり「???」である。

免許を持たない両親の元に育った俺はその頃「軽バン」の意味もわからなかったのである。

何から慌ただしい状況だったので、指差された方向に少しだけ移動して待っていると

「ほら早く乗れ!」と肩を押される。

もうこの時点で不安だらけである。


4~5人ほど乗ったであろうか、車は出発しどこに行くのかもわからない。(当然これから何をやるのかも)

30分ほど走ったところでコンビニというか弁当屋に車は止まった。

皆弁当や飲み物を買っているので、俺も後から慌てて買うことに。

出発すると皆早速買った弁当を食べている。俺も慌てて食べる。

そんなこんなで小一時間でいわゆる「現場」についた。

どこかもわからないが、大規模な建設工事現場であるということはわかった。(後から知ったのだが当時まだ珍しかった郊外型大型ショッピングモールであった)

車から降り、リーダー風の方から「初めてのやつはこっちだ」とプレハブ小屋に連れて行かれた。

そこで背広にヘルメット姿の責任者らしい人に引き渡されたがその方がリーダー風の方に

「また新人?まーた事前説明やらなくちゃいけないじゃない!お宅のとこに言っといてよ、もう新人は勘弁してくれって!」

そんなやり取りを経て、形式的とも思える事前説明を受けてから作業現場へ向かう。


車で一緒に来た方々は既に作業を始めていた。

と言っても何をすれば良いかわからないので聞いてみると

「そこら辺にある工事跡の瓦礫を袋に詰めて集積しろ」

とのこと。

とりあえず瓦礫を見つけては袋に入れある程度の重さになったら集積場所に持って行った。

小一時間もすれば粗方やることはなくなったので指示を仰ぐと、工事が進む度に瓦礫が出るのでそれを見つけて同じようにやれば良いとのこと。

ひたすら工事を眺めるか、瓦礫が出たら袋に詰めて集積することの繰り返し。

退屈とまではいかなかったが、どう考えても待ってる時間の方が長かった。


そうこうするうちに昼休み。

皆で車に向かう。

昼御飯はどこで食べるのだろうと思っていたら皆おもむろにビニール袋から弁当を取り出しパクついている。

そういうことだったのか!!

朝に寄った店で朝御飯と昼御飯を調達してたのだ・・・

朝はあまりお腹が空いてなかったのに周囲に習って無理矢理食べたのだが・・・


久しぶりに身体を動かしたのでお腹が空いてる。

仕方なく自販機に行き、普段は飲まない炭酸飲料を2本買って空腹を満たす。


午後も同じ作業をやって16時には終了となり現場を離れ事務所に戻った。

そこで日給の入った封筒を受け取り中身を確認すると8,500円入ってた。

確か9,000円では・・・と思っていると

「あー、500円は源泉徴収だから」

といなされた。

まぁそんなものなのかなと思いながらも、大したことやってないのにこれだけ稼げるなんて楽勝だなぁと初日にして思った。


帰宅前に普段は見るだけだったタコ焼き屋に寄って2箱購入して帰宅。

「これバイト代で買った」

と母親に渡すと大変喜んでくれた。

初任給で親にプレゼントってわけではなかったが、そう受け取られたのかもしれない。


体力的には全く問題なかったが多少気疲れもあり、明日も早いのでその日は風呂に入ってすぐに寝た。

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