第14話 高校生7
明けて朝、いつもと変わらず朝補習から登校。
一晩経って落ち着きは取り戻した感じ。
その日最後の授業であった数学の先生が
「受かってると良いな~!」
としきりに声をかけてくる。
知ってるだけにはにかみながら応える。
それで授業終了後、進路指導部に呼ばれ担任が満面の笑みで「おめでとう!」と伝えてくれた。
「今知った風に装う」のと「もう実は知ってた」と両方入り交じる心中であったが、とにかく正式に肩の荷がおりたことになる。
翌日職員室前には
合格者掲示欄に佐賀大学1名が追加され最後の推薦入試の結果でようやく国立大合格者1名となり、自分のことなのにまるで学校のために尽くしたかのように「重責を果たした・・・」と偉そうに感慨にふけっていた。
顔見知りの先生達から次々祝福され、中でも1年の時の担任が一番喜んでくれた。
この担任の先生が国立大を勧めたからこそ実現できたから・・・
それから数日後、進路指導部に呼ばれた。
進路指導部長から
「推薦合格したところ悪いが、◯◯大学と△△大学の一般入試を受けてくれないか。受験料は学校が負担する。」
と打診。
今では御法度であるが、当時はこうした水増し合格者を創出するのは私立高校にとっては進学実績作りとして当たり前のことであった。
「親も受験させるつもりでしたので、その2つ(4学部)を受験するつもりです。」
と答えて帰宅。
母親にそのことを話すと
「とんでもない!受験料は当然ウチ負担!」
と引く様子もない。
まぁそうなるとは思っていたが・・・
翌日の朝補習は世界史だった。
いつものように出欠確認から始まるのだが・・・ん?俺の名前が呼ばれなかった・・・
先生も特に俺に視線を向けるようなことはしない。
これはもう出席の要無しということかと判断し、翌日から補習は参加せず、のんびり登校することにした。
まだ期末試験もあるし、露骨に手を抜くわけにもいかないので、内容確認程度の勉強量に一気にトーンダウンした。
通ってた塾も合格したことで辞めることに。
先生方も入塾した当初は「まさか国立大に受かるようになるなんて」と思い出話をしてくれた。
自分もあの頃の未熟さを思い出すと赤面した・・・
後日、進路指導部長に受験料の件を話すと
「では折半ということで話してくれないか」
とのことであったので、帰宅して母親に話すと「それが落としどころかな・・・」と了承。
その後、受験料の経緯について俺から触れることはなかった。
久しぶりに冬休みを満喫というかのんびり過ごし、年も明けて始業式前の補習にも参加せずの状態でいたため気付かなかったが、そういやセンター試験の願書出してたんだっけ・・・と現実に戻った。
今みたいにセンター試験利用の大学も少なく、また私立大は3教科のため合格するにはかなり高い平均点を叩き出さねば合格しないため、センター試験利用の受験は諦めていた。
故にセンター試験当日は形だけ登校し、昼過ぎには帰宅した。
クラスのほとんどはセンター試験を受けていたし、授業があるわけでもないしセンター試験二日目は思い切って学校に行かなかった。
行かなかったというよりは、繁華街に出てウロウロしてた・・・というのも小さい頃から運動ばかりであまりこうして街中で遊ぶこともない人生であったため、散策するだけでも俺にとっては十分刺激的であった。
生活のモチベーションを失い、ただ悪戯に時間を浪費するだけであったが、私大受験もあるので手慰み程度の勉強をしながら受験の日を待つことになる。
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