第8話 高校生1

勉強という意味では十分な準備期間を経ての高校入学を迎えた。

当時のK高校は九州随一のマンモス高校であり我々の学年は普通科17クラス、デザイン科2クラスの計19クラス880名ほどであった。

普通科はさらに特進3クラス、準特進7クラス、普通7クラスに別れており俺は1年7組(準特進)で高校生活をスタートすることになった。


教室に入ると・・・ん?女子がいない・・・隣のクラスにはいるのに・・・

担任の自己紹介が始まり高校生活の概要が説明されるまでもなくわかった事実。

このクラスは男子クラスなのだ。


んー、共学目当てではるばる電車通学して来たのに何たることか。

唯一の救いは数ある校舎の中でも新校舎(6階建て)と呼ばれるエアコン完備の綺麗な建物であることだけだった。

しかし教室は5階でエレベーターの使用は教職員のみ。

これには「先が思いやられる」の一言に尽きた。


入学式もそこそこに早速校内統一模試。

内容は中学卒業程度だったので、先取り準備をしていた俺は苦戦するだろうと感じていた。

ところが数日後の結果を見て驚いた。

クラスで2位、学年でも70位くらいだったのだ。

特進クラスだけでも120人居てその下の準特進クラス在籍なのに学年で70位、つまり成績上位1割以内という中学時代では考えられない好成績だったのだ。

そのくらいの上位者は成績表が職員室前に掲示されるためあっという間にクラス内での「序列」は知るところとなった。


これは素直に嬉しかったというかこれまで成績優秀なんて縁のない世界だったので、やる気に火がついたわけだ。

勿論当面の目標はクラスで1位になること。

その日から猛勉強の3年間が始まった。


最寄り駅が一緒だったということもあり、すぐにクラス1位のライバル立石くんとは仲良くなった。

かなりのイケメンであるが、どことなくヤンキー風でもあるところがなおさら意識させた。

普段の授業中でも一際存在感を放っていたし、どちらかと言えば地味な俺はしばらく影に隠れていた。


逆に入学当初から通い始めた塾では現実を知ることとなる。

同じ学年の生徒は10人ほどであったが、皆進学校でありその中で俺の高校は無名に近い存在であった。

当然授業のレベルは高く、ついていくのが必死というかそれこそ中学時代の落ちこぼれが脳裏をよぎった。

彼らには解けて当たり前の問題が俺にはアプローチ方法すら思いつかない。

高校ではもてはやされるも塾では落ちこぼれ・・・

それでもやるしかないとしがみつきながら勉強の毎日だった。


最初の中間試験、この頃にはさすがに「高校内」では自信がつき始めていた。

結果はクラス2位、準特進でも約300人中2位となり(特進や普通とは試験内容が違う)、目標は1位しかないというところまできた。

そのライバル立石くんはこの頃から少し様子が変わってきており、元々ガリ勉タイプではなかったのか遊び連中と付き合うことが多くなり俺との会話も次第に減っていった。


2学期の中間ではついに俺がクラスもコースでも1位になり益々勉強の調子は上がっていった。

立石くんはもう「勉強に飽きた」感じで成績の下降も気にすることなく自由気ままに遊んでいた。

そんな彼が羨ましくもあったがその時の自分には「今のこの位置から落ちたくない」一心しかなかった。


秋には勉強合宿というものがあり、約1週間阿蘇山の宿泊施設で勉強勉強の缶詰生活もあった。

修学旅行気分の学生か半分以上いた中、もう俺には勉強のことしか頭になかった。

特進の生徒が自習を切り上げた後も俺は残って勉強し、先生が「もう寝てくれ」と逆に根を上げるくらい勉強に勤しんだ。


この頃になるとようやく塾の勉強内容もわかるようになり、他高の生徒らとも打ち解けるようになった。

学校が終わると定食屋で晩御飯を済ませ塾に行き、帰宅する頃時計の針は22時を過ぎることも少なくなかった。

それからご飯→風呂済ませて1時くらいまで勉強、翌朝6時過ぎには起きて高校の朝補習に向かっていた。

母親は毎日弁当を作ってくれ、おかげで学食というものを利用することも少なかった。(校舎~学食の移動は辛いものがある)


年が変わる頃には大学進学も視野に入れていた。

1年前まで高校すら行かないと言っていたのに。


結局成績1位になってからは1度もその座を譲ることなく通知表もほぼオール5という中学時代には信じられない成績で1年生は修了を迎えることとなる。


早くも進路について考えることとなり、担任からは特進クラスへの昇格間違いなしと言われた。

そこで俺は附属大学への推薦を考えてる旨を伝えると「そんなもったいないことはしない。頑張れば国立大も夢ではない」と考えもしなかったことを薦められる。

特進クラスからでも年に数人しか合格者が出ない国立大・・・そんなとこに勝負行けるのかと当時は半信半疑であった。


こうして無事に特進クラスへの編入が決まるわけだが、学年が上がる前に修学旅行(ホームステイ)に行くことになる。

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