第6話 中学生6
話は少し戻り3年生秋
部活も終わり、卒業後の進路について考える時期になった。
周囲が志望高校の話で持ちきりだったことに嫌気もあったし、俺には関係ないものと思っていた。
当時、俺は調理師になりたいという気持ちがあった。
幼い頃から月に1回、外食する機会に恵まれていた。
それもコース料理ばかりで中学生になった頃には俺が店を決めて俺が予約の電話を入れるほどであった。
躾に煩かった母親がテーブルマナーや食を通した教育をしたかったのだろう。
全くできない父親を反面教師に俺は得意気になっていたし、普段厳しい母親が例えばフランス料理店では「一杯だけよ」と言いながらワインを飲ませてくれたこともあった。
シェフ等に触れあう機会を経て「自分もこうなりたい」と思うようになった。
その頃、漫画「美味しんぼ」に出会ったことも大きい。
中学出たら調理師専門学校に行くもんだと勝手に決めつけていた。
進路希望調査にも調理師専門学校しか書かず困った担任は母親に説得を求め、その母親も「高校だけは行きなさい」と言うことで仕方なく高校進学という道を選択することに。
その結果は第5話後半のとおり。
進路も決まりあとは卒業を待つだけ。
こうなると高校への期待・・・の前に、色々あるもので、特に「別れ」というものが。
交際している者同士で希望高に合格、またそうでなかったり。
卒業前に別れたり付き合ったりする者。
そんな周囲のことは俺には関係ないと思っていたが、遠回しな告白を受けたりもした。
ただ、それまで顔は知ってたが話したこともない女子からそう言われてもどうして良いかわからず有耶無耶に終わらせた記憶がある。(後でその女子の仲間からは色々問い詰められたが)
卒業式後に顔馴染みの後輩から「私じゃなくて私の友達が先輩のボタンが欲しいと言ってて・・・」と待ち伏せを食らった時も曖昧な返事で通りすぎた。
(それ絶対お前だろって言いたかったけれど)
周囲が羨ましかったはずなのにいざ自分がそうなると何もできなかったというのが正しいと思う。
端的に言うなら「意気地無し」である。
結局思い出らしいものが作られなかったなぁ~と振り返りながら帰宅した。
とにかく、1つの区切りとなっただけだ。
俺は中学卒業をそう捉え、高校入学まで過ごすことになる。
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