第3話 中学生3

いくつかのオリエンテーションも終わり、本格的な授業も始まりつつあった。

母親から「部活は必ず入りなさい」と厳命を受けていたのであれこれ思案してみる。

3歳から小学生4年までずっと水泳をやっていたが、正直疲れた(週5回の練習は中学生達と一緒の育成コース)のでそれからは少年サッカーに入ってた。

中学に入りその時の先輩達から「当然サッカー部に入るよな?」みたいな誘いは受けていたが、正直この歳でその先輩達とまた上下関係が再開すると思うと気持ちが萎え、別の運動部に入ることを決意。


野球は不動の人気があり、「球拾い」のイメージがあるため却下。

バスケは当時、マイケル・ジョーダンが活躍しており人気急上昇、今さら水泳もやる気がなく銃剣道や陸上には興味がわかず・・・

そこでたまたま数学の先生をしていた六反田先生からバレー部に来ないかと誘われ、「そういやバレーボールってやったことないな」と軽い気持ちで入部を決意。

新入生は10人ほどだっただろうか、まぁ横一線だし何とかなるやろという程度だった。


その頃には毎日話せる相手も数人できて、学校生活じたいに不満等はなかった。

というよりも刺激がなくある意味退屈でもあった。

元々勉強は好きではなかったし、何より数学と英語に苦しんだ。

数学は英文字が出てきた時点で意味不明、当然英語も理解するどころか辞書の活用すらおぼつかなかった。

そんな時に、既に不良と目されていた酒井くんとひょんなことから仲良くなり、よく遊ぶようになった。


酒井くんとつるむようになってからは毎日が刺激的で楽しかった。

登校中に会うと、通学路から外れコンビニや公園で道草してから平然と遅刻参戦。

昼休みには給食も食べずに屋上でお菓子を食べて過ごしたり、「熱がある」と言っては早退し道草や酒井くんの家に行って遊んだりしていた。

部活は出たり出なかったりだったが特に何も言われることもなく・・・(仮入部期間ということもあったのだろう)


そんなある日、授業をサボって屋上でカードゲームをしてた時だったと思う、不意に先生に見つかり大目玉を食らった。

それだけで済まず今度はバレー部顧問の六反田先生に別室に連れて行かれ「本当に反省しているならこれから毎日部活に来い」とのことで以来真面目に部活をするようになった。


酒井くんとはそれから遊ぶ機会は減ったものの相変わらず仲良しだったが、当時からタバコは吸うわ喧嘩はするわでついに1年持たずに転校することになった。

(大学時代にSNSで偶然見つけた時には彼は海外在住で色々な小規模ビジネスをやっているとのことであった)


小さい頃から運動ばかりで遊ぶことを知らなかった俺には大変貴重な友達であったが、前述のとおりまた部活一本の生活に戻ってしまった。

運動じたいは嫌いではなく、むしろこの両親からどうしてこんな運動神経が得られたのかと両親も不思議に思うくらいバレー部でも頭角を表すことになる。

実際に秋の新人戦では試合に出られない先輩達もいる中、新入生で2人試合に出られた内の1人になった。


勉強は相変わらずで、中学生最初の中間試験では酷い成績だった。

特に英語は最初の試験ということもあり安易なもの(平均点が90点くらい)にも関わらず50点くらいしか取ることができなかった記憶がある。

社会科だけは担任の威厳も手伝ってかそこそこの成績だったが後は酷いもので、中学1年目の通知表は社会と体育が5であとは2か3という程度であった。


部活にも慣れ体育祭等、中学生生活のサイクルにも慣れた頃、同じクラスのコに初恋のようなものを感じることもあった。

学年でもトップクラスの可愛さで既に噂が出ていたが、クラスでたまたま同じ「班」になったことから何かと接する機会も多く、そのコの仲良しグループとも仲良くなり漫画本の貸し借りや誕生日プレゼント交換という小学生の時には経験したこともなかった俺にとっては初めての出来事ばかりであった。

女の子グループからは色々と茶化されたりしていたのでおそらくそのコも同じような気持ちであったのかもしれない。

(後年、20年ぶりくらいにSNSを介して再会した。お互い既婚だったためそのことには触れずに居酒屋で思い出話や互いの現況話に終始。)

そんな淡い恋心も2年生になりクラス替えにより離れたことで幾分薄れることになる。

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