第11話 ツフロ開拓地 3
「こんにちは。登録をお願いします」
「はい。それではこちらの用紙に記入をお願いします」
「どれどれ。名前、生年月日、出身国...こりゃまずいな」
「どうかされましたか?」
「いや、なんでもないですよ」
あぁ、可愛い受付嬢に怪しまれてる...いや、しょうがないでしょ。この世界が何歴なのか、日本という国があるのか、そもそも字が書けるのか。全く分からない。
アラン達のような良い人に出会えてすっかり忘れていたが、結局俺は異世界人でこの世界の事をなんにも知らないのだ。
そう思い出すと、途端に怖くなってきた。全員が善人ではない。俺の持っている道具はこの世界だったら金になるだろうし、自分には後ろ盾がない。
冷や汗が頬を伝い、用紙を濡らす。
もしここで不審者扱いされたらどうなる?小さい町だ、噂なんてすぐに広まる。
ここを出るか?出たとしてどうやって居場所を探す?
ふと、肩に乗せたファイアサラマンダーの呼吸が聞こえた。
えええい、書いちまえ!言葉だって通じたんだ!異世界転移なら文字ぐらい書けるようになってんだろ!
カウンターの上の羽ペン(!)をインク壺に突っ込み、書き殴った。
「ニホン...?」
「さぁ、これで終わりだろ?」
「はい、終わりですが怪しすぎるので支部長を呼んできます。そちらの応接室にてお待ちください」
ああああああ!?
振り返ってアランを見ると...
「僕は支部長が苦手なんだ。外で待ってるから元気でね?」
見捨てるな!
そうだ、ヘルダムさんは!
いつのまにかいない!
俺はただ正直に書いただけなのに!何をしたってんだ!?
馬鹿正直とはこの事だな!
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