第10話 ツフロ開拓地 2
それから俺はアランにツフロやその他の地名、ツフロが属するヴェンヌ王国の事や魔法など色々な事を聞いた。
魔物というものの話もしたかったのだが、ピーターとダンが疲れた顔をして大勢を連れてきたところで解散となった。二人ともすまない、と言っていた。
それにしても華の国とはなんなのだろう。とてつもなく強大な国、ぐらいしか伝わってこないな...
その後俺はアランに連れられ、ギルドという所にやって来た。
この世界のギルドとは主に冒険者に仕事の斡旋や買い取り、身分を証明したりという互助組織だ。ギルドも冒険者も創作の中にあるものとほぼ一緒だ。
ただ、ここにはあまり人数は居ないようだが。
どうしてかというと仕事が少ないからだ。ツフロでの仕事は周囲の魔物や生物を狩り、食肉や素材を提供することくらいしか無くそれだったら誰でも出来るという訳でギルドを通して冒険者に依頼する人なんて居ない。
いまはほぼ、火の湿地を守るという巨大な魔物の警戒だけが仕事だ。
警戒と言っても少し遠いところまで行って、魔物がツフロに近づいていないかを確認するだけだ。
これからは近くの都、東のカイラから雇った冒険者でそいつを討伐するようだ。
そして、なぜギルドに来たかというと金がないからだ。世界が違えば貨幣も違うのは当たり前で、この世界で生きていくにはこの世界の金が必要だ。
なのでギルドにモノを売りにいく。
何を売るのかというと、マッチだ。ファイアサラマンダーかー仲間になってから、火種がいらなくなったので、マッチの出番は無くなった。
突然だが、この世界には火を噴くトカゲがいるように魔法も存在する。魔法についてアランに聞いた時は変な顔をされてしまったが。
魔法は存在するのだが、少し特殊だ。そもそも多くの人間は魔法を使えない。適性を持つ僅かな人間が現象を起こせる。その様な人々は魔術師と呼ばれている。
では、その他大勢の一般人には関係が無いのかというとそうでもない。昔に魔術師の中でも特別な人間である賢者という人が居たらしく、一般人でも魔術を使える様にする道具、魔道具を開発した。魔術師でなくとも魔術の素である魔力は誰でも持っていることを発見した賢者は、魔力を流すことで現象を起こせる道具を大量生産し魔術師と一般人の立場を逆転させた。
といっても魔術師の起こす現象と魔道具の規模は違うが。魔術師は大から小まで様々な規模の魔術を起こせるが、魔道具は予め決められた現象しか起こせない。
そこで、マッチの出番だ。マッチは魔術に頼らず、科学の力で現象を起こす。この価値を最大限に理解させ、高値で売りつける。世界に革命をもたらすであろう科学という力はきっと大金を産むだろう。
「おおおおっ、これがギルドか〜」
二階建で一階はコンビニくらいの広さだった。
「はは、ギルドくらいでそんなに嬉しいの?」
「ああ、想像してた通りだ!受付嬢は可愛いし、依頼の書いてあるボード、荒事やってそうなオッサン!」
「はは、まぁオッサンで見た目は怖いけど...彼はヘルダムさん、凄くいい人なんだ。というかツフロはいい人だらけだよ」
なんて話していたら、ヘルダムさんがやって来た。
「よおアラン。んで、横のはなんだ?ここはガキの遊び場じゃねぇんだ」
と、いきなり難癖つけて来た。
「テンプレキター!」
「ヘルダムさん、どうしたんですか?急に怒るなんて」
「ガハハ、さっきの会話から察するに彼はギルドに来るのが初めてなんだろ?ちょっとしたサービスで名物の一つでもやってやろうかと思ってな」
「脅すのがサービスって...」
「いや、ありがとうございました。俺は豊原滝時です」
「こっちこそ若い奴がギルドに興味を持ってくれて嬉しいよ。ここらじゃ仕事が少ないし、肝っ玉のある奴が少ないからな。で、タキジも冒険者になるのか?」
本当に良い人だった。
「うーん、今回はあるモノを売りに来ただけなんですけど、冒険者になるのも良いですね」
やっぱ異世界に来たら冒険者だよな。
「うん、タキジは華の国からツフロまで来たんだし、霧の谷とか火の湿地を突破したんだから冒険者に向いてるんじゃない?」
「それに、どうやってか知らないが魔物を連れてる様だしな」
肩に乗っているファイアサラマンダーを見てヘルダムさんがそう言った。
「それじゃ、モノを売るにしても先ずは登録だよ」
「そうだな。あ、登録料とかはいるのか?」
「いるけど...そっか、タキジはこの国のお金を持ってなかったんだね。貸してあげるよ」
「おぉ、ありがとうな」
そう言って受付に向かった。
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