第7話 マイトサラマンダーとハイドプランツ(中編)

追っていると、彼らは次第に集まって来た。既に二桁はいる。

暗くなって来ているので、もっといそうだが。



「お、まさかこれに集まっているとはな」


そう、彼らは例の穴ぼこ植物に集合していた。おびただしい数だ。100匹以上はいるだろう。


でも、何のために?


パリピの如く乱痴気騒ぎをする訳じゃないだろう。

ある場所に集まって繁殖する生物は知られている。


いや、両生類だしここが繁殖地で丁度今が繁殖期、なのか?


その答えは直ぐに見つかった。穴ぼこ植物に近づいてみると、小さいサンショウウオ達が一生懸命に表面を登り、次々と穴の中へ入っていくのだ。


穴は地面に近い方が多く空いていて、上に行くにつれて減っている。

こいつらは穴の中で繁殖するのか?それにしては狭すぎる。


だったら、隠れているんじゃないだろうか。


穴の大きさもこいつらにとっては丁度良いだろう。

隠れているとしたら昼行性か。でもファイアサラマンダーがしょっちゅう食べていたし、夜行性の方が良さそうだが。


もっとヤバい奴が居るのかもしれない。


とにかくこいつらにはファイアサラマンダーのような特別な能力は無さそうだ。

質より量で、小さい個体を大量に産むということか。そうやってバランスを取っているんだろう。


穴に入ろうとしていた個体を捕まえて、夜になる前に細部を観察することにした。

食べた時には空腹でそんな余裕は無かった。


この個体は10cm程の大きさで、手と足の間に肋条が走っている。

表皮には薄く白い斑点が申し訳程度に付いていて、尾には黄色のラインが伸びている。そしてヌラッとした質感。

顔を見ると扁平で、目がやや飛び出している。


間違いない。両生類有尾目だ。


手足は野球のミットのようで、カエルの水かきが分厚くなった感じだ。おそらくこれで植物を登っているのだろう。





野球のミットに、夜は隠れて過ごす。この特徴から名前をつけるとすれば、マイトサラマンダーだろう。

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