介入からの逃走
コプロセッサー、略してコプロは、人間の脳機能を補助するデバイスだ。耳の後ろに電極と、Bluetooth で接続するデバイスで、ポケットやかばんに入れておけば、記憶や論理的思考の補助をする。コプロは政府と経団連が公認していて、大学受験や資格試験の会場に持ち込んでよい。その結果、国民の技能水準は飛躍的に向上した。一方でコプロは国民を監視し思考に介入しているという反対派もいた。コプロなしでは、現代社会で必要な技能に到達できないため、反対はの活動家たちは大した成果をあげられない。
主人公はインテリアデザイナーで、近々、マネージメントの昇進試験を受けることになっている。誤って階段から落ちたとき、コプロセッサが破損した。そのとき自分がマネジメントを志望している理由がよく分からなくなった。本当はデザインが好きだと自覚する。そして、これが活動家たちが言っている「介入」なのだと理解する。建築ラッシュを控えて、インテリアデザイナーのマネジメントが不足しそうなことが、社会的問題になりそうだったからだ。
コプロを捨てると、この社会でまとも生きていけないであろう。だが、コプロつけておくと干渉と監視を受ける。マネジメント職の合間にちょこちょこ趣味でやる時間を総合すると、たいした時間にならない。貯金を食いつぶして、数年間、手を動かして死んだほうが、デザインできる時間が多くなる。そう計算して、主人公はコプロを捨てる。
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