天使の棺桶
天使たちは、定期的に人間を選んで仮死状態にし、家族から引き離す。そして蘇生してから、タイムマシンと呼ばれる棺桶に入れて、過去に送るという儀式を行っている。どの時代に送るかは乱数表で決める。「過去に送られた人間が、鳥と交配し、自分たちの祖先となる」という信仰を持っているからだ。
主人公である天使は、生贄リストに載っている人間を愛しており、過去に送りたくない。博学の知り合いに相談すると、分子生物学の実験ツールを調べてみてはと提案をうける。こっそり分子生物学の講義にもぐりこみ、遺伝子の分子的差異から、ふたつの種が分岐した年代を推定する分子進化時計という手法にたどり着く。自治統治機関である元老院から調査予算を獲得し、様々な鳥と天使の遺伝子サンプルを調査した。その結果、天使たちは一億年前に鳥から分岐したのであり、人間との交配ではないことが分かる。
科学よりも信仰を重んじる多くの天使たちは、それでも伝統ある儀式を続けるべきだと主張し、元老院は世論を抑えきれない。儀式を避けられないと悟った主人公は、愛する生贄の人間と共に二千年前に飛んだ。
元老院の追跡調査により、彼らふたりが天使の起源であると発覚したため、もはや儀式は行われていない。そのため仮死状態になった人間を、天使が迎えにくる様子を目にすることはない。
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