第二十八章…「その恐怖は…。」
戦地に…、身を置く事自体に恐怖は無い。
自分にとって…、フィーにとって怖い事は…、「消える事」…。
それは絶命による消失ではない…、文字通りの消失。
自分の力、戦闘技術は十分ある…と自負している。
この程度の悪魔相手に、後れを取るほど自分は弱くない、でも怖い…、怖くて怖くてたまらない。
襲い来る刃を、避ける事も、手に持ったバット?と呼ばれる鉄棒で受け止める事も、容易にできるのに…。
自分の心の奥底に根付いた恐怖は、克服のために築いた自信をも侵食して襲い来る。
「…ッ!?」
---[01]---
迫る悪魔の剣を防ぐけれど、体は後ろへと弾き飛ばされる。
「…くッ!」
ザザザッと地面を靴が滑り、バットを通じて伝わる衝撃が、フィーの手を震わせた。
悪魔の数は3体…。
武器は…、人間界の剣…大太刀と呼ばれるモノ、向寺さんを襲った悪魔の槍、そして…。
攻撃を防いだ事で、体勢の乱れたフィーに向かって飛んでくる…矢。
体をよじりながら、横へ身体を流す事で、当たる事こそなかったものの、一発でも当たってしまえば、戦闘どころの話ではない。
そんな3種の武器を、悪魔が使い分け、自分達が有利になるであろう距離をしっかりと取りつつ、息を合わせるように攻めてくる…。
---[02]---
悪魔には自身の存在保持のための本能しか無い…と聞く。
自身の肉体を保つため、魔力を求める者…、なら…今こうして3体の悪魔が連携して攻めてくるのは、また別の理由から来るのでしょうか?
なんにせよ…、こちらのやるべき事に変わりは無いのですが…。
フィーは、微かに震える…バットを持った手を一瞥する。
今の所、戦闘にさほど影響がないとはいえ、自身の処理しきれない感情が、思考を濁すようで…、やはり不安が残る。
「ふぅ…」
深呼吸をした所で、その事実は覆らない…、震えを止める事は出来ない。
考えてもしょうがない…自分の根の事を、何とか頭から追い出して、目の前の悪魔へと集中する。
---[03]---
3体はフィーを相手取り、今だあの部屋の扉を叩く悪魔もいる…、何故こちらに来ないのか…疑問は残る状況。
もう悪魔はいない…そうであるなら納得もいくけれど、何回か夜人の方の任務に同行した際は、1体でも悪魔がいるのなら、その数は何倍にも膨れ上がる印象があります…。
もちろん、それに当てはまらない事もあるでしょうけど、これだけで終わらない…そう思っていた方が、自分の意思をより引き締められていい。
近い順に槍剣矢…、先頭に槍を置き、その横…少し離れた位置に剣がいる…、そして後方の離れた位置に矢…、主戦闘員が槍…、その補助をする剣…、援護をする矢…といった所ですか…。
槍は、イクシアの槍斧と比べて貧相に見える武器ではありますが、その攻撃範囲の広さに、素早い突き攻撃が鬼門…、それにかまけていれば、横から攻撃力のある剣が迫りますし、そこへさらに追い打ちをかけるように矢が迫る…。
---[04]---
天人界と違い、魔力に対しての技術に乏しい人間界ならではの武器…といった所でしょうか。
あのジュウ?とかライフル…というモノも、あの矢の延長線上でしょう。
ソレを、相手に当てる技術は必要でしょうけど、その力自体に技術を必要とせず、致死程度まで持って行くその道具…、恐ろしい限りです…。
「・・・ッ」
迫る槍悪魔の突き攻撃…、その攻撃をバットで軌道を逸らしながら、自分へと当たるのを防ぐ。
踏み込まれれば、その分後ろへと引き、次の攻撃に備える。
その瞬間、視界の端に映る剣悪魔の横振りを見て、体を精一杯後ろへとのけ反らせると、さっきまで自分の胴体があった場所を大太刀の刃が通過していく。
フィーは、倒れ行く自分の体を、バットを持っていない方の手を上へと上げて地面に付き、それを自分の体の差さえにすると、足を地面から離し、その足をそのまま剣悪魔の顔目掛けて振り上げる。
---[05]---
ガタンッと甲冑?…鎧が音を鳴らし、その音の大きさに比例するように、フィーの足はジンジンと痛みに泣いた。
しかし、その一撃が剣悪魔の動きを鈍らせ、瞬間的に意識から外せる状況となって、槍悪魔へと集中したフィーは、迫る付き攻撃に、後方転回して姿勢が低くなった自分の体を、上へと押し上げる力も加え、その突きを上へと弾き返す。
矢悪魔の攻撃…その射線上、ソレを遮るように槍悪魔を、その間に挟み、全力で突き飛ばすッ。
矢悪魔の方へと叩き飛ばされる槍悪魔を追うように、フィーも一気に矢悪魔との距離を詰める。
途中放たれた矢を避け、次の一射の準備が整う頃には、既に攻撃圏内…。
その頭部目掛け、全力の突きッ。
鎧もろとも、その頭部を粉砕させる気持ちで突き出したバットだったが、その先端は悪魔の頭部を捉える事無く、その横を通り抜けていった。
---[06]---
「…ッ!?」
体が…横へと引っ張られる。
剣悪魔…。
ある程度の距離があったはずの剣悪魔が、横から勢いよく飛び掛かってきて、フィーの上着を掴んでいた。
「きゃッ!?」
すごい力で、横へと投げ飛ばされ、体を打ちつけながら、体中に走る痛みに全身が強張った…。
「つッ…」
なんて力…。
それに、移動の速さにも驚くべきものがある…、その速さは、明らかに常人の…人間界の人間の域を超えている。
---[07]---
「…ッ!?」
それに、息つく暇もない。
立ち上がろうとした時には、もう剣悪魔が目の前にまで迫り、その剣を突き刺さんと逆手に持って振り上げている所…。
咄嗟に体を横に転がらせれば、フィーがさっきまでいた所に、剣が突き刺さり、ソレを横目に立ち上がろうとすれば、今度は矢が飛んでくる。
避ける事ができない…、咄嗟に飛んでくるソレに向かって、バットを振るい、何とか弾き落とす事こそできたものの、今度は剣悪魔の追撃に対処が遅れた。
勢いよく振り下ろされる剣、それをバットで防ぐけれど、力負けしてしまったフィーは、その場で膝を付く。
「…くッ…」
バットが凹み、その刃が僅かにバットを斬る様にしてめり込んでいるようにも見えた…。
---[08]---
それでも、完全に受け止める事ができているのなら…、それは些事…、相手の攻撃が、僅かにフィーのバットの強化を上回っただけで、まだ慌てる時ではない。
しかし、その瞬間、押し込まれていた剣の力が弱まる。
「…たあぁッ!!」
何かが来る…、そんな予感が頭を過りはしたけれど、それでもこのまま押し込まれているだけでは、負ける瞬間を待つだけに等しい…。
それだけはイヤだ…と、力を上げ、剣を押し返す。
瞬間、剣悪魔が横へとズレる。
「…ッ!?」
その後ろには、槍悪魔が控え、剣悪魔の動きに合わせるように、槍がフィー目掛けて突き出されてきた。
剣を押し返したばかりで、完全に体勢が、その流れに追いつかない、さっきまでのようにバットで弾く事は出来ない…、咄嗟に取ったのは、体をよじり…避ける事…、でも、それも間に合う事無く…、右の横腹の少し上を斬る。
---[09]---
「…んぐッ!」
痛い…、痛い痛い…。
斬られた場所は、最初はそこから全身を覆うように不快感が巡り、遅れて激痛が襲い来る。
痛みで顔が苦痛に歪む。
それでも…、痛いから…と、逃げる事は出来ない。
後ろへと倒れそうになる体を、何とか踏ん張って、体をかすめていく槍を掴む。
バットを持つ腕に魔力を注ぎ、出来る限りの強化を施す。
「くあぁーーッ!」
力一杯…バットを振った。
同時に、肩が外れるんじゃないかと思えるほどの激痛が襲う、腹部の痛みも含めて、意識が飛びそうになる…。
---[10]---
バットは槍悪魔の頭部にヒットし、ソレを粉砕しながら、その体を横へと叩き飛ばす。
そして今度は…。
グサッ…と、自身の左肩に衝撃が襲った。
矢が当たった…、あと少し横に動けていたら、かすり傷程度で済んだ位置に矢は刺さる。
横腹に両肩…、痛みが更なる痛みを生み、その痛みが恐怖へと変わっていく。
「く…ふぅ…」
足が震えてすくむ…。
だめ…、ここにイクシアはいない…、いつもフィーの傍に居て、フィーの代わりに戦ってくれる人はいない…。
だから、フィーがやらなきゃ…。
---[11]---
「フィーよ、強くあれ…」
自分に言い聞かす…。
自分がやらなきゃ…と。
全身を強化する魔力の量を上げる…、節々の痛みは「消失」し、痛みが消えるのに伴い、頭を支配しかけていた恐怖も消えていく…。
この時の始まりから終わりまで震えも止まる…。
迫る剣悪魔の剣、体を横へと移動させながら、剣を弾き、その勢いに乗って一回転しながら、勢いを増したバットで、剣悪魔を叩き飛ばす。
「・・・」
この状態は楽でいい…、頭の中が勝手に真っ白になっていくから…、余計な事を考えなくて済む。
でも忘れてはいけない…、消失の意味を。
---[12]---
叩き飛ばされた剣悪魔は倒れ込む事なく、耐えきったけれど、そこへ追い打ちをかける…、上着を破くように脱ぎ捨てて、その悪魔の顔へと投げつけ…、視界を奪い、ソレを払いのけられる前に、連続でその胴体へと突き攻撃を叩き揉む。
剣悪魔の体がよろめく。
隙を狙うように飛んでくる矢を、捻りを聞かせた宙がえりで避け、体が宙にある中、そのまま剣悪魔を叩き飛ばす。
倒れた剣悪魔に対して、再び近寄り、跳び上がると、その頭部へ、バットを思い切り振る下ろした。
パリィンッ…とガラスが割れる音が、保健室内にこだまする。
悪魔達に、窓を割って…とか、そう言った思考は無いようで、偶然扉に取り付けられていた小さな窓のガラスが割れた。
---[13]---
音としては、大した事はなかったけど、その音だけで、堤防が決壊したかのような絶望感すら、この部屋には漂う。
割れた窓から覗く赤い眼は、さすがに怖いモノがあった。
ゾクッと、まるで蛇に睨まれたカエルの気持ちを、身を持って実感しているような、そんな気分だ。
こちらの声に耳を貸さず、扉を開けようとしているのか、ひたすらに叩き続けていた…その事実だけでも、ココにいる人たちの恐怖を煽る事は、十二分に達成し、これは夢だ…と目を逸らす人もいる。
何も知らない人からすれば、確かにこれは夢と言っても差し支えが無いほどに、現実から離れた状況かもしれない…、でも、これは現実だ。
俺自身は、これが現実だと知っている上に、槍で刺された傷が、嫌という程主張してきている。
否定したくても否定できず、現実を突きつけられ、ろくに現実逃避も出来やしない。
---[14]---
恐怖も緊張も、等しく周りの人間と同じように感じている中で、知識として、この場の事を知ってしまっているからこそ、冷静な自分が恨めしいし、現実逃避をして神に助けを求めながらすがる人の…なんと羨ましい事か…。
傷が痛むし、俺からしたら最低な状態だけど、部屋全体を見れば、まだ大事に至っていないだけマシだ。
それにしても、この状況下で、逃げ出す人たちがいない事に驚く。
廊下の方はともかく、グラウンド側は、フィアが相手にしている悪魔が現れはしたけど、それ以外に悪魔は見ず手薄…、逃げる選択肢が出てもおかしくは無いと思うけど。
俺はバットを片手に、もう片方の手で、パロトーネを握る。
これが何なのか…、知っているからこその安心材料。
自分に肉体面での協力があまり出来ない以上、ここの人達をどう助けるかに頭を回す…そのための冷静さだが、助ける方法なんぞ、今の今まで考えていて全く出てこなかった。
---[15]---
結局、フィアや私、夜人の人達頼りな所が大きい。
「・・・」
自分は何もできていない…。
足の事もそうだ。
普段から、なんでも自分だけでできるように…と生活していても、場合によって無力さを突きつけられる。
恐怖はあれど、悪魔達の侵入を防ごうと、扉が開けられない様に押さえつけている講師の人達…、俺も足が動けばあそこに立っていただろう。
でもその場合は、夢を願わなかったかもしれないし、私としての知識もなかったかも…、そう考えれば一長一短だ。
俺は首を横に振る。
今はそういう事を考えてる場合じゃなく、今後の役に立つ事を考えるべきだ。
---[16]---
この状況を、どうやって生き延びるかが大事で、襲い来るモノは悪魔達…、その大半が人に毛が生えた程度の強さしか無いはずだけど、グラウンドで戦っているフィアの様子を見るに、あの悪魔達はそれなりに強敵らしい。
あのレベルになってしまったら、ただでさえ怖気づいているこの人たちでは、相手取るなんて夢のまた夢。
戦わない事が必須条件で、悪魔の動きを読む必要があるけど、あんな神出鬼没で規則性の無い連中の動きを予測する事なんて不可能だろう…、俺には無理だ。
「・・・いや」
悪魔は肉体維持のための魔力を求める…、そんな事を夜人の誰かが言ってたはず…、なら、それを利用すれば逃げられる…。
でもそれには魔力を使う必要性があって、その技術が無いのに、少量とはいえ魔力を持つ俺らが集団で動いたら、まず間違いなく悪魔達に囲まれて終わりだ。
---[17]---
そもそも、なんで急に悪魔が集まり出したんだ…て話だよ…。
『なんで…なんでこんな…』
もはや、絶望状況下でのお決まりのような台詞が耳に入る。
それは皆が思ってる事だ。
状況からして、ココにいる人達は、皆卒業生の展示会に来ただけのはず。
俺も、差異はあるけど大体一緒だ。
小さな子供2人、楽しませたいだけだったのに、そのうちの1人が攫われて、残った1人が未だ意識が戻らず。
罪悪感も人一倍で、胸が締め付けられる思いだ。
なのに、俺には、悪魔との戦いで苦戦するフィアを応援する事しかできない。
「・・・ッ!?」
その時、ゾクッと背中を嫌な悪寒が走る。
---[18]---
なんだ?
分からない…。
さっきよりも怖い…恐怖って感情が膨れ上がったような気がする。
どこから?
視界を泳がせる。
それが単なる体の不調なのか、それとも何かの予感なのか、わからない中、悪魔が叩く扉の方向、そっちを見るのが、とてつもなく怖かった。
ドンッドンッと、その瞬間から、叩かれる扉が…より一層大きい悲鳴を上げる。
「…ッ!? そこから離れ…」
どんな現象が自分の身に起きてるかなんて、わかる訳もないけど、その悪寒が…恐怖が意味する所は…、分かった気がする。
だからこそ、その場にいた人達に離れるように言おうとした…けど、全てを言い切る前に、保健室の扉には亀裂が入り、そしてはじけ飛ぶように、扉が壊れた。
---[19]---
他の悪魔よりもガタイの大きな悪魔、他の倍近くあるその腕で扉を壊したらしい。
扉の破片が、悪魔を入れまいと押さえていた人達を襲い、大怪我こそしていないものの、動ける状態ではなくしてしまう。
「クソッ!」
この状況で、動ける人間が居ない。
悪魔が、倒れた人へと手を伸ばす…。
まるで巨漢のプロレスラーのような図体の悪魔目掛け、俺はバットを振った。
片足で踏ん張りなんて利くはずがない…、片手で力の入った攻撃をできる訳がない…、この体でできる事なんて何もない…、無い無い尽くしで、成す術も…。
なんで俺は、こんな正義感溢れる行動に出てるんだ…。
こんな足で…、自分には無理な事はわかりきってるはずなのに…。
「だああああぁぁぁぁーーーーッ!」
---[20]---
松葉杖を放し、バットを両手で持って振り下ろすソレは、悪魔の腕目掛けて振った…しかし、瞬く間、気づけば、俺の体は後方へと引っ張られ、腕は槍で刺された傷も上乗せされて激痛が走る…。
バットは手元に無い…。
「…ッ!?」
まるで、近くを飛ぶ羽虫でも振り払うかのように、振るわれた悪魔の手が、バットを弾き飛ばしたんだ…。
その衝撃で俺も後ろへ…。
背中を打ち付けて、さらなる痛みが襲う。
目からは涙がこぼれ、口の中には血の味が微かに混じり始めた。
そんな身を挺した行動は、幸か不幸か…、悪魔の意識を自分の方へと移す結果にはなったらしい。
---[21]---
さっき手を伸ばそうとした相手の横を通り過ぎ、俺の方へと歩いてくる。
「…くそ…。」
幸か不幸?
不幸に決まってる…。
迫る悪魔を横目に、壁に体を預けながら立ち上がると、グラウンドへとそのまま出られる通用口へと、体中の痛みが振り切れてる中で向かう。
その途中には、さっきまで持っていたバットも転がり、何とかそれだけでも…と、俺は手を伸ばす。
しゃがむ事1つ取っても不自由な体だ。
こんな状況、そうそう無いと言っても、この不自由さに、久方ぶりに切れそうである。
「…ッ!?」
---[22]---
なんとかバットを取った時、視界に悪魔を入れると、こちらに拳を振り上げている瞬間だった。
ゾッとした…、扉を数発で粉砕するような腕が、自分に迫ろうとしている光景に、全身が強張った。
咄嗟に、私の時の防御と同じようにバットでガードしようとしたけど、その一撃を防ぐ事なんて…到底無理と言うモノ…。
バットはひん曲がり、俺の体は、通用口の扉ごと外へと叩き飛ばされた。
アニメや漫画みたいな退室を、まさか俺自身が体験するとは思っていなかったけど、そんな事を言っている場合じゃない。
背中は当然…、胸にも激痛が…というより、息をするだけでヤバい…吸っても吐いても…、激痛が走る…。
「あ…が…」
---[23]---
当然その場から逃げる事だってできない…
これは…まさかと思うが、アバラを持ってかれた…という奴では…?
悪魔が馬乗りになる様に膝を付き、俺を見下ろす。
ヤバい…やば…い…。
気絶させておこう…なんて、優しさがある訳がないんだから、さっきと同じ攻撃を直に喰らったら、俺の人生が終わる。
何かないか…、俺の視線は、悪魔ではなく周りへと向かった。
通用口使われていたガラスが、腕へと刺さり、白黒の世界を赤い鮮血が染め上げえている。
でも…、その中にガラスではない何か…を見た。
悪魔が再び手を振り上げる。
それを喰らったら終わる…、その死への恐怖だけが、俺の頭を支配し、そこから逃げる手段を命懸けで実行に移す。
---[24]---
手に握られたモノ…、俺にとっては新鮮でも、私にとっては、もはや慣れ親しんだモノ…、その手を振り下ろされる悪魔の手に向かって突き出した。
その瞬間、俺の手が光り、同時に拳を開けば、そこにはうっすらと透明な盾が突如として現れる。
ソレは振り下ろされた拳を粉々になりながら防ぎ、その衝撃を受け止め切れない俺の腕は、勢いよく俺の顔へとぶち当たった。
鼻から、何かが垂れ落ちる感触を感じながら、その悪魔の首が一閃と共に落ちるのを見て…、俺の視界は真っ暗になった。
剣悪魔の頭を粉砕し…、その体が灰へと変わっていく。
次の目標を…。
---[25]---
やっと倒した1体に目もくれず…、フィーは次の相手へと視線を向ける…、矢悪魔…、次の一射の準備をする姿に臆する事無く、走り始めた。
矢悪魔との距離は離れているという訳ではない。
放たれたその一射を、フィーが避けると、矢悪魔は新しく矢をつがえる事無く、その弓を投げ捨て、その腰にある剣へと手を伸ばした。
お互いに自身の得物を振るう一閃…、その剣の刃は、フィーのバットを斬り裂き、こちらの攻撃が悪魔に届かず終わる。
魔力でできたバットは、さすがにその衝撃に耐えられなかったのか、その形を崩し始めた。
そこへ悪魔はさらに剣を振るう。
フィーは、躊躇する事無く、崩れ始めたバットを捨て、一歩引いて悪魔の攻撃を避ける…、さらに悪魔は踏み込んでくるけれど、フィーもその手に持ったモノへと力を入れた…。
---[26]---
パロトーネ、使わずに済めば…なんて事は言うまい。
その手に作り出す疑似武器は、普段から愛用している軍の直剣…、でもこのままでは意味が無い…、疑似武器は疑似時武器でも…、本当の武器へと変わってもらわなければ…。
消失…。
邪魔なモノを消し、悪魔の武器とこちらの武器が交差する。
一合二合と金属音を響かせて、最後の一閃…、フィーの剣が、悪魔の体を斬り裂いて、その体を「灰へと変えた」。
ガシャ…、まだ一体…、消える所を見ていない相手がいる…。
その音に引かれるように…視線を向ければ、視界に入るのは、フィー目掛けて繰り出された槍だ。
しかし、それがフィーに届く事は無く、横槍が入り、周辺に砂ぼこりが舞い上がる。
悪魔の槍は真っ二つに斬られ、力任せにも見える一撃で、3体目の悪魔を斬り伏せる…フェリスの姿が…そこにはあった。
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