第四章…「その踏み込んだ世界は。」


 慰めている様には見えない。

 何かの手伝いをさせている様には見えない。

 遊んでいる様には見えない…。

 そんな小さな子を囲む子供達の集まり。

 中庭に出るために靴を用意するのも面倒で、汚れない様にと靴下だけ脱ぎ、外へと出る。

『・・・いなければ・・・』

『なんで・・・』

『・・・・・・てくるな』

 近づくにつれて聞こえてくる小さな子を囲む子供達の声は、途切れ途切れでしっかりと聞こえてはこないけど、楽しい会話…とは思えない。


---[01]---


「そこで何をしているの?」

 遠巻きから見て分かっていた事だけど、囲っていた子供達は小学生ぐらいの子だけど、それだけではなく、実年齢はわからないけど、明らかに中学生以上の子も混じっている。

 私の声掛けに、その子達は反応し、一斉にこちらに目を向けた。

 小さな男の子を囲む5人の子供、中庭なんて目立つ場所で騒いでいた割には、私に声を掛けられて焦る様子を見せる。

「いや…、これは…その」

 見られちゃマズいと思っているから、そんな動揺を見せる。

 こんな場所でそのマズい事をやっている事を考えると、その場の勢いか、単純にこういう事には不慣れなのか…。

「告げ口をするつもりは無いわ。私の質問にしっかりと誠実に返せなかった理由、しっかりと自分に問いかけなさい」


---[02]---


「はい…」

 ここの人間ではない以上、必要以上にでしゃばる訳にも行かないし、そもそも事情を知らないから、子供達の反応から非がある方を見分けるしかないのだが…。

 私の言葉に、子供達の中で一番の年長者であろう少年が、前に出て頭を下げると、その子達を連れて、その場を後にした。

 そして残されたのは子供達が囲っていた一番小さい子だけ。

 背丈から察するに、多分妹の雪奈…夢の中だとリユル…と同じぐらい、年齢は5歳前後と言った所だ。

 男の子は、去っていく子供達の背中を少しの間だけ眺めると、振り返って後ろの池をのぞく様にしゃがみ込む。

 さっきの子供達の雰囲気から言って、この子は良くない事…暴言とかを吐かれていたと思うんだけど、その辺で悲しんだり悔しんだり、落ち込む様子が無ければ泣く様子もその子にはなかった。


---[03]---


「ぼく、名前は?」

 どういう状態なのか…。

 問題だと思って割って入ったけど、この状況がその問題を解決した状態なのかが全くもってわからず、男の子を1人置いて行く訳にもいかなくて、私は男の子の横へ行き、しゃがみ込んでその子が見ているであろうモノに視線を落とした。

 何の変哲もない池だ。

 池の中では鯉が泳ぐ。

 錦鯉が割合の大半を占めているのを見て、お金持ちの池なんだなと思ってしまうのは、私がその辺の知識が無い素人であるからだろうか。

「とおや…」

 池を覗きながら、急かすことなく男の子が返事をしてくれるのを待っていると、小さい声でそれが返ってくる。

「とおや…か。ここで何をしていたの?」


---[04]---


「・・・さかな、みてた」

「魚…鯉か。楽しい?」

「わかんない…」

「…そう」

 さっきの子達があなたに何をしたのか…、聞こうとして、私はその言葉を飲み込む。

 はたから見たら、さっきの子供達がとおやをイジメている図にしか見えなかった。

 実際にどうだったかはわからないけど、あまり話をしたい事柄でもないだろう…と思う。

「おねえちゃん、だれ…?」

「私? 私はフェリス」

「…なんでフェリスおねえちゃんには、しっぽがあるの?」

「これ?」


---[05]---


 とおやが私の後ろに視線を向けるから、私は彼に見えやすいように、私ととおやの間まで尻尾を回す。

「何だっけ。私は天人界の人間で、竜種だから…かな」

「りゅうしゅ?」

「・・・え~と…。ドラゴンの尻尾や爪を持ってる人の事。ん~、どう説明すればいいかな…」

 自分が竜種の説明をするとは思っていなかった、しかも何も知らない子供に…。

 だから、これだという言葉がパッと出てこない。

 そして、何とかそれを絞り出す。

「犬…みたいなものかな」

「いぬ?」

「そう。同じ犬、わんちゃんでも、大きい子や小さい子、毛が長い子や短い子がいるでしょ? それこそ尻尾が無い子もいるじゃない? そんな感じかな?」


---[06]---


「・・・じゃあおねえちゃんは、とうおやとおなじ?」

「おなじ…? ・・・うん、同じ」

 尻尾が生えていようが、爪があろうが、人は人だ、だから同じ。

「とおやは、ここに住んでるの? このおっきなお家に」

「ううん。とおやのおうちは、もっとちいさいよ。おとうさんが、いまつくってる」

「作ってる?」

 大工か何かなのか?

 いやでも、ここにいるんだから、この家…久遠寺家の関係者のはずだ。

 なら、そのお父さんも夜人…か?

「とおやは、今日はなんでこの家に来たの?」

 そう言えば、昨日、この家に来た時も、確かこの池を覗く子供がいたな。


---[07]---


「おとうさん、しごとで」

 父親が仕事で面倒を見れないからここにいるのか。

 じゃあ母親は?

 この流れだと、非常に聞きづらい問題を抱えていそうだけど。

「おかあさんも、しごと。しばらくかえってこれないって」

「そう…なんだ」

 それは何よりだ…悪い意味じゃなく…。

 想像が飛んで飛んで、自分で聞きづらい雰囲気を作ってたけど、杞憂で良かった。

「さわってもいい?」

「触る?」

「しっぽ」

「あ~、尻尾ね。いいよ」


---[08]---


 とおやは、基本無表情だ。

 さっきから、その表情を一切崩さず、見た目は子供だけど、それ相応の…らしさ…が欠如しているように思う。

 尻尾を触っているこの瞬間の反応も、なかなかに読み取りづらい。

 恐る恐るでもなく、興味津々という訳でもなく、淡々とその手を私の尻尾へと伸ばし続けた。

 私の、子供ならこう来るだろう…という想像だと、犬なり猫なり、興味を持って笑顔でわしゃわしゃと、加減を調整できない力で触って来るような、そんなイメージなんだけど。

 この子にはそれはないらしい。

「どう? 触ってみた感想は」

「かたい。あと、あったかい」


---[09]---


「そっか」

 ドラゴンで…分類的には何処になるのだろう?

 爬虫類?

 まぁ見た目はそれに近いのに体温を感じるって、改めて思うと新鮮だな。

「硬いと暖かいか。でも、それだけじゃないよ」

 私は立ちあがり、とおやに自分の方へもっと近づく寄りに手招きをする。

 表情こそ変わらないものの、首を傾げるとおやに私は尻尾を指差す。

「座って」

 そう言って、私は尻尾を椅子ぐらいの高さにして、とうやに催促するように、その足を優しく尻尾で叩いた。

 最初こそ尻尾をじっと見たまま動かなかったけど、意を決して座る。


---[10]---


「硬い、暖かい、そして力持ちだ」

 自身の尻尾に座ったとおやを、自分の視線の高さまで持ち上げる。

 呆気に取られたように軽く口を開けたまま、とおやは私ではなく周りを見渡して、すごい…と声を漏らした。

「こんなの朝飯前だ…、まぁもう朝飯後だけど」

「ほかになにかできる?」

「他に? ・・・ん~。能力とかじゃなく、芸みたいなモノなら、尻尾の先に筆とかペンを付ければ、手みたいに字を書けるかな。・・・たぶん」

「お~、すごい」

 無表情だった子が、思った事を口に出してくれる事、それはとても嬉しい。

 感情が顔に出てこないからこそ、きっかけはなんでもいいから、ちょっとした事でも出してくれたら、笑顔を見せてくれたぐらいに嬉しく思える。


---[11]---


『とおや!?』

 そんな時、後ろの方から子供の声が聞こえてくる。

 振り返れば、そこにはまた別の男の子。

 駆け寄ってくる少年は、どことなくとおやに似ているけど、身長はこの子よりもある。

「おにいちゃん」

「あなたの?」

「うん」

 似ているのも当然の様だ。

 尻尾に乗せていたとおやを下ろし、駆け寄ってくる少年に視線の高さを合わせるために、私はしゃがみ込む。

「とおやのお兄さん?」


---[12]---


「そ、そうで…です。弟が、め…めいわくをかけ…かけなかったでしょうか」

「まずは落ち着きなさい」

「は…はい」

 とおやの兄は、チラチラとこちらに視線を向けては放す。

「かってに外を歩いちゃいけないって、父ちゃん言ってたろ?」

 何回か深呼吸をした兄は、とおやの手を取って自分の方へと近づける。

「まぁまぁ、とおやぐらいの歳の子は、いろんなものに興味を持つから、あっちこっち行っちゃうのは仕方ないわ」

「で、で…でも」

「まずは自己紹介しましょう。私の名前はフェリス・リータ。あなたのお名前は?」

「お、お…オレは、「真田義弘(さなだ・よしひろ)」…で…です」


---[13]---


 慌ててたから変なしゃべり方になっていたのだと思ったけど、とおやに話しかけてた時は普通だったから、どうやらそういう事じゃないらしい。

 義弘は、弟を自身の後ろへと移動させ、相変わらずこちらに視線を向けては反らし、最終的には地面の方へと落とした。

「真田?」

「は…はい。その…。やと…の真田信廉…は、オレたちの…と…と父ちゃん…です」

「なるほど」

 似ているかどうかは…、あまり顔を見ていなかったから、正直わからないけど、あのつなぎを着た格好は十夜の言う家を作っていたからか…多分。

 という事は父親が夜人な訳で、この子達も、その夜人だったりするのかな?


---[14]---


 このままその事について聞いてみようかとも思ったけど、それはまた今度にしよう。

 重苦しいというか、ここに来た私達に対しての夜人達の対応の仕方とか、由緒正しい…とかとは違うけど、重要なもののように思うし、わかるかどうかはともかく子供達に聞くような話題じゃない。

 時間が空いた時、それこそ信廉とかに聞けばいいだろう。

「義弘君は、何歳かな?」

 だから、とりあえず今は堅苦しい話は抜きにして、この子達と親睦を深める事にする。

「オレ、オレ…は、今年で10才になり…なります」

「じゃあ、9歳か。私の弟と同じね」

 とおやは雪奈と同じぐらいだし、義弘は秋辰…テルと同じか。


---[15]---


 何か親近感が湧いてしまうというかなんというか、勝手ながら自然と距離感が狭まってしまう。

「その歳で弟の面倒をしっかり見てるのか。偉いじゃない」

 義弘の頭に手をのせて、優しく撫でると、兄の方はここに来た時からそうだったが、弟とは対照的に、少しだけ頬を赤らめながら、それでいて複雑そうな表情を浮かべた。

「とおや…漢数字の「十」に「夜」…て書いて、「十夜(とおや)」て、よ…読むんだけど、十夜、オレがトイレに行ってる間に、へ…部屋を出て行っちゃって…」

「そう。まぁでも、こうやって家の中で見つかったから、よかったわね」

「う…うん」

 義弘は十夜の話をする時は普通に喋れるのか…、ちょっとぎこちないけど。

 家族の事だからこそ、すらすらと喋れて、そうでない所は詰まり気味、人見知り…それか内気…、まぁ似たようなモノか。


---[16]---


「十夜、お兄ちゃんに何も言わずに出てきちゃダメじゃない。お兄ちゃん、心配したってさ」

「・・・ごめん…なさい」

「いいよ、怒ってない」

 義弘に謝罪をする時の十夜の表情は、どこか悲し気に見えた。

 この子も、兄と一緒なのか?

 家族相手なら、その鉄仮面も柔らかめの材質に変わるようだ。

「じゃあ、十夜、急いで部屋に戻るぞ」

「…うん」

「そんなに急がなくてもいいじゃない。十夜はまだ小さいから、走ると転ぶわよ」

「でも…」

『お前達、そこで何をしているか?』


---[17]---


 慌てた様子の義弘を私が止めた時、この中庭に新たな客人が現れた。

 まぁ正確には、客人ではなく家主…だが。

 私はともかく、それ以外にここにいるのは子供が2人。

 それにしては低い…ドスの効いた声が耳へと届き、聞いた義弘の体がビクッと小さく跳ねる。

 家の家主和正は、眼光鋭くこちらに視線を向けた。

「義弘、その小僧を部屋から出すなと言ったはずだ。何故ここにいる?」

「そ…それは…」

 まるで、仕事で失敗をした部下を叱るかのような声だ。

 少なくとも、子供を叱る声とは到底思えない。

 さっきの十夜を囲っていた子供達もそうだけど、何か訳アリらしい。

「まぁいい。義弘、小僧と一緒に部屋に戻れ、そして目を離すな。部屋の外に出すなよ」


---[18]---


「は、はい…」

 私の位置からは、義弘の背中しか見えないけど、肩が僅かに震えているのだけは、見る事ができた。

 うつむき気味に立っていた義弘は、今度はしっかりと前を見て、弟の手を引きながら歩き出す。

 そんな2人が家の中に入っていくのを見届けて、私は周りに聞こえるように大きなため息を漏らした。

 不快感もあって、自然と眉もひそまる。

「こちらにも事情があり、問題も抱えている。天人界の使者であっても、他世界への過度な干渉は控えていただきたい」

「・・・そもそもその事情とやらを知らないから、一切関りを持たない…というのは約束できないわね。でも、事情が何であれ、子供に対しての接し方とは…正直思えなかったわ」


---[19]---


「左様か。・・・リータ殿…だったか、貴殿達がここにいる間は、その理想に近い接し方をするよう心がけよう」

「・・・」

 引っかかる言い方だな。

 自分にも同じ年頃の弟と妹がいる以上、あれを見てしまうと虫の居所が悪くなるのだが、和正の言う事も正しい。

 いや、それはただの言い訳だ。

 知り合ったばかりの面々で言い争いをしても何も生まれない、それにここで声を荒げたら私だけの問題ではなくなる。

「人を呼ぼう。これから仕事で外へ出るだろうに、素足のまま行く訳にも行くまい」


---[20]---


 何かを見透かすかのようにこちらの目をじっと見続けた和正は、何かを納得したかのように視線を外し、家の中へと戻っていった。

「はぁ…」

 他所の問題に首を突っ込むな…、自分の問題だけでは済まない…。

「・・・」

 真面目か、フェリス・リータ。

 …なんでだろうな。

 何か…、違和感を感じる。

 和正に対して、苛立ちを覚えたのは本当だし、何か言ってやろうと思ったのも本当だ。

 なのに、なんで頭の中の冷静な部分は、こんなに状況を考慮してくるんだ。

 なんで、それに私は合わせてるんだ?

 どう言えばいいのかわからないけど、とにかく違和感がこの瞬間の私の頭の中を包んでいた。


「なんか、ご飯を食べていた時とは真逆の雰囲気を出してるじゃないか、フェリ君」


---[21]---


「別に…」

 車の中、後部座席が向かい合っている空間に、正面に座るエルンは、興味深そうにこちらを眺める。

「食事が口に合いませんでしたか?」

 そんな私の事を気遣ってか、エルンの隣に座る信廉が、何か食べる物を用意しようか…と提案してくるが、私はそれに首を振る。

「食事は十分満足のいくモノだったから、真田さんは気にしなくてもいいわ」

 エルン達の言う目的地に向かう中、それに同伴する夜人…、それが信廉だった。

 きっと、今私の中に溜まっている鬱憤は、この同伴者が信廉ではなかったら、喜々として体外に排出されていた事だろう。

 でも今は、それができなかった。


---[22]---


 このむしゃくしゃいした気持ちの大本の原因は和正…ないしは自分自身にある訳で、信廉の息子達には全く非はない。

 でも、その問題の場にいて、それが発端になっているのだから、親として気にならないはずがないだろう。

 変に不安を煽るのは避けたかった。

「私の事はいいから、これからの事を話そう」

 そんなもどかしい気持ちを抱えたまま、頭を切り替えようと、これからの話を切り出すのだった。



 気持ちが悪い…。

 気分とか、吐き気とかじゃなくて、自分の眼前に広がる世界が気持ち悪い。


---[23]---


「イク、もう寝ちゃだめですよ?」

「寝ないって…。というか、ここにいるとそんな気にもならね~よ」

 今、ウチ事イクシア・ノードッグはフィアと共に、また世界を移動して、悪魔界にいる。

 そこはすごく気持ち悪い世界だ。

 文字通り全てが白黒の世界。

 そこに並ぶ建物、木々達は、この世界に来る直前、人間界…悪魔界に入る寸前まで見ていたソレと同じなんだけど、全てが白黒。

 自分で何を言っているかわからなくなるけど、本当にそうとしか言いようがない。

 場所はあの久遠寺の家の玄関先…なのに、白黒になっただけで、印象はガラッと変わり、そもそも人間界の方だって初めての場所だったけど、ついさっきまでそこに居たとは思えない程、初めて来たかのような印象が生まれる。


---[24]---


 この世界に来慣れて居る同伴者の夜人連中は、ウチらがここに慣れるまでの間、準備をすると言って、悪魔界の久遠寺家の家の中へと入っていった。

「変わった世界ですね」

「フィーは平気なのか? 周りは白黒なのに、自分達は人間界にいた時のまま、なんて言うのか…こう…気持ち悪い…」

「うん、なんかフィー達だけ場違いみたいですよ。周りは白黒で色のなくなった世界なのに、フィー達は色を持っていますから。知識としてはこういう場所なのだとわかっていましたけど、実際に目で見てみると何とも不思議な世界ですね」

「この世界にいると調子が狂う…」

「まぁまぁ、ここで一生を過ごす訳じゃないのですから、少しの辛抱ですよ」

「フィーはそう言うけど、さっきから私の服掴んだままじゃん」


---[25]---


「・・・あはは。それっぽい事を言っても、やっぱりちょっと怖いですからね。ただ知らない場所に来る事よりも、自分の常識から外れた場所に来るというのは、ずっと怖い」

 うん、わかる、わかるぞ。

 ウチはフィアを力強く抱きしめる。

「大丈夫だ、フィー。危ない奴が現れたって、ウチが片付けてやるから、フィーは大船に乗って安心しろッ!」

「え、ちょッ!? イク、苦しい…苦しいですから」

 不安がるフィアを励ますつもりで抱きしめたけど、それも一瞬で自分を奮い立たせる行為へと変わる。

 はぁ…落ち着く。

 フィアが近くに居てくれる。


---[26]---


 ウチにとっての元気の源…。

「大丈夫…。絶対にウチが守るから」

「イク?」

「はぁ…元気出たッ! さて、何だっけ…とりあえず調査に行こうか」

「悪魔の調査に、この世界において異変が起きていないかの調査ですよ。まずは同伴してくれている夜人の人達と一緒に、この世界を巡回している夜人の人達と合流して、話を聞きましょう」

「そうそう。それだ」

 悪魔…か。

 ウチは戦った事ないけど、どんな奴らなのか、それは楽しみだ。

 持ってきた自分の槍斧を右手で握り、その手に馴染む握り心地が、より一層の心の混乱を落ち着かせてくれる。


---[27]---


「じゃあ行きましょう、イク」

 この世界に一緒に来た夜人が家から出てきた事を確認し、フィアは改めてそいつらによろしくお願いします…と頭を下げた。

 ウチもそれに釣られて会釈をしたが、ウチらの行動は、恐れ多い…と夜人を動揺させる。

 天人界の人間が夜人にとってどんな存在か知らないが、このへこへこした接せられ方に慣れるまでは、もう少しかかりそうだ。


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