第21話◇詩穂からのメール⑨◇
◇慶ちゃん、本当に本当に心配かけてごめんね。
わたし自身、ここまで治りかけていたのが、こんなに酷くなるなんて思ってなかったよ。
慶ちゃんのメールにも返信すらできずに、枕元のスマホに手を伸ばす気力すらなくて。
救急病院に息子に連れて行って貰って点滴と吸入をして薬を貰えたのは本当に良かった。
この時を逃したら行く体力もなかったかもしれない。
レントゲンも撮ってもらって肺炎になってなかったのもホッとしたし、インフルだったら厄介だと思ってたから、少し安心はしたよ。
そして、病院から帰りついて、倒れ込むように布団に横になって、ずっと眠っていたみたい。
◇詩穂◇
◇今日は久しぶりに声が聴けて嬉しかったよ。病気で寝込んでる時って、ものすごく気が弱くなってしまうし、不安の歯止めがきかなくなって、悪いことばかり考えて泣きそうになってた。咳がまだしんどくて。
息子も仕事だし、帰ってくるのが深夜で遅いから、朝から夜まで一人でしょう。
心細くて堪らなくなってね。
だからね、慶ちゃんの声聴いた時に力をね、貰った気がしたよ。
慶ちゃんの声は温かかった。いつもの優しい声。ありがとうね。
◇詩穂◇
◇今日は久しぶりにお風呂に入ってサッパリしたよ。
湯船に浸かって芯まで温もって、そのまま冷めないうちに、お布団に入った。
鼻詰まりも治ってきて、息が楽になってきたから、やっと治ってきてる実感が持てたよ。
でも、気をつけて安静にしておくね。
薬もちゃんと飲みきったからね。水分もちゃんと取ってるよ。
治りがけが肝心だもんね。
ぎゅうううってして欲しい、なんて子供みたいなこと思ったりしてる。
笑わないでね。
今ね、ずっと前からの二人で撮った写真を見てるよ……。
また笑ってきっと逢えることを信じてる。
◇詩穂◇
◇詩穂の独白◇
(もう逢えないのかもしれないなんて、弱気になった。そして遠距離の切なさを思った。そんなことは、わかっていたつもりだったのに。何かあっても、すぐに駆けつけて貰うことも駆けつけることもできない。お互いの家族に公認でも、こればかりは、どうしようもない。厳しい現実がそこにある。愛してる?と聞きたい衝動に何度も駆られたけど、聞けなかった。愛してるよと答えてくれることは信じているのに。聞いてしまったら泣いてしまいそうで聞けなかったの。二人で一緒に撮った写真を見てるよ。笑顔のわたし達。また逢える日はくるんだろうか。ううん、きっと逢えるよね。信じなきゃ。だから尚更、元気にならなきゃね)
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