第10話◇詩穂からのメール⑤◇
◇慶ちゃん、毎日、電話で話していたけど、メールは久しぶりだね。
何だか慶ちゃんもわたしも11月には色んなことで慌ただしくて、わたしの体調のこともあったから、その上に心配かけてしまったよね。ごめんね。
そして、いよいよ12月になったね。
約束の日まで、あと少し、わたしは何だかまだ実感が湧かない気がしてる。
付き合いだしてずいぶん経つけど、こんなに逢えなかったのは初めてかもしれないね。
だからかな。半年以上は長かったなぁ。
毎日、電話で話していたから、そういう意味では途切れていた感じはしないけど、やっぱり寂しかったよ。
若い人達よりも、わたし達は我慢はできると思う。だけど、若い人達には沢山残っている時間が、わたし達にはそんなに残ってない。
それは、どうしようもないことで、わかっていることで。
残された時間をだから、本当はできる限り側で寄り添っていけたらいいのになぁって思うけど。
慶ちゃんにはお父さんから託された家業があって、お母さんや智ちゃんを支えながら生きる生活がある。
そして、わたしはわたしで息子は一人立ちしているとはいえ、病気を抱えた父と住み慣れた場所での生活がある。
何より自分の病気もある。
付き合いを反対されている訳でもない。
寧ろ、有難いことに理解してくれている。
此処を離れて慶ちゃんの住む街に行くことを考えなかったといえば嘘になるよ。
多分、若い頃のわたしなら飛んでいったかもしれない。
少し前のことだけどね、ある人から遠距離恋愛なんて上手くいく気がしないって言われたの。
2人の年齢差のこともね。
正直、無神経な言い方に悲しくなったよ。
そんなに深いことなんて知らない人だったから尚更に傷ついた。
抜けない
うん、すごく傷ついたんだ。
腹も立ったよ。
何も知らないくせにって。
でも反面、どんな風に見られるのかは、どうしようもないことなんだって思った。
色んな人がいて色んな考え方があるんだから。
歳をとることは悪いことばかりじゃない。
だけど、
ごめんね。
せっかくもう少しで逢えるのに。
逢えるのをすごくすごく楽しみにしてるよ。
新幹線から降りて、慶ちゃんの姿を探して見つける、あの瞬間が好き。
何も言わずに繋いでくれる手の温かさが好き。
ああ、また此処に戻って来れたんだって思うから。
準備を急がなきゃ。
でも、後は、できるだけぼんやり過ごすようにするよ。
無事に逢えますように。
それだけを祈るような気持ちで。
おやすみなさい。
大好きだよ。
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