635 マナの兵器の設計図に、書かれていたもの

 「行きましょう」


 サーシャは言うと、ハディーシャに目配せし、先に歩き出した。


 その後に、マナトが続く。ミトも続いた。


 「おう、打ち合わせか」

 「なんや、まだなんかあんのかいな。お前らの隊はいっそがしいのぉ~」

 「へへ、まあな」

 「なんでちょっと誇らしげやねん」

 「……いや、」


 サーシャが振り向いた。


 「てゆうか、なんであなた達までついてくるのよ」

 「「えっ?」」


     ※     ※     ※


 マナトとミトの個室へ。


 中にいるのは、サーシャとマナトと、ミトの3人。


 ミトは引き続き、マナトの目付け役として、中へ入ることに。


 また、ハディーシャは個室の外で待機し、中に入る人がいたら代わりにノックすることになった。


 ラクトとユスフは、サーシャ的にお呼びでないということだった。


 「ちょっと、見てもらいたいものが……」


 個室に入るとすぐ、サーシャは服のかくしから一枚の紙きれを取り出した。


 「それは?」

 「あなたのところの副隊長さんが持っていた、マナの兵器の設計図を、私が模写したものよ」

 「マナの兵器だって……!?」

 「そんなものが……!」


 マナトとミトの驚いた様子に、サーシャはうなずきつつ、言葉を次いだ。


 「このメロの国のお偉いさんたち、本気でジンの息の根を止めようとしてるようなのね」

 「本気で……!」

 「そんなことが……!」


 サーシャはマナの兵器の設計図の模写を、マナトに渡した。


 「マナト、あなた、日本で教育は受けてたのよね?」


 視線を紙に落としているマナトに、サーシャが尋ねる。


 「えっ?えっと、ええ、そりゃ、まあ……」

 「こっちでは?ヤスリブ文字は?」

 「えっと、まだ分からないところもあるけど、それなりに……あっ、でも、ここ、ちょっと……」

 「あっ、僕が教えるよ。えっとね……あぁ、これ、『以下、反応式』って」

 「……えっ」


 マナトの読み進める視線が、止まった。


 「Mと、小文字の、g……アルファベットだ……」

 つぶやくように、マナトは言った。


 「……?」

 逆に分からないといった表情で、ミトが首をかしげた。


 「……」

 そして、緊張した面持ちで、サーシャがうなずいた。


 「えっと……M、g……」

 「……習ってきた、でしょ?」

 「あぁ、そっか、マグネシウム」


 マナトは顔を上げて、サーシャのほうを向いて言った。


 「うん」

 「……えっ、マグネシウム……?」


 マナトは模写した紙に視線を戻し、つぶやくように言った。


 「……なんで、マグネシウムの元素記号が、ここに書かれてるんだ……?」


 さらにマナトはミトに分からないところを聞きつつ、読み進めていった。


 すると、


 「Nと、小文字の、a……」

 「また似たようなのが出てきたね」

 「うん……」

 「2Na+2H2O、矢印あって……2NaOH+H2……」

 「あはは……呪文かな?」

 「ミトくん、ある意味、正解よ」

 「えっ?」

 「これ……」


 マナトが言った。


 「これ、ナトリウムと水の、化学反応式じゃないか……!」

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