634 これからの戦いに向けて/ユスフとラクト、ウッキウキ
先までの、陽気で無邪気な雰囲気だったユスフが一転して、真面目な口調になって語り出した。
「これから協力して、一緒に戦うんやから、そら仲良うしといたほうがええやんけ」
「お、おう、そりゃ、まあ」
「特にラクト、お前さんと、あっちにおるミトの
……なるほど、たしかに。
ハディーシャは思った。
これから協力し、一緒に戦う……つまりそれは、ジンと戦うということ。先の円卓会議も、そのための協議であった。
共に戦い抜く上で、やはり必要となるのがそれぞれの信頼関係。
もうすでに、動いているキャラバンの村の者たちもいる。そこに、余計なわだかまりはぜったいに生じてはいけないことはあってはならない。
そして、それぞれが自分の役割を全うし、相手に対して、全力で戦った上で……、
勝てるかどうか、分からないのだ……ジンに。
「おう、なんだよお前、意外と律儀じゃねえか。そんなこと気にしてたのかよ」
ラクトが言った。
「別に俺は気にしてねえよ。あそこは、ああいう場だった訳だからな」
「いやまあ、いうてオレも、気にしてへんけど」
「なんだそれ!」
「ハウラ様が、そのあたり気にしとったんや」
「……誰だっけ?」
「うちの隊長や」
「あぁ、あの人か。あの人も強そうだよなぁ」
「いや、実際、強いねん……!」
「やっぱり!」
「オレ、何度もハウラ様と組手やってんねんけど、一度も勝てたことないねん……」
「マジで!す、スゲえな……!」
「いやでも、聞いて聞いて!オレのまわりやと、やっぱハウラ様が素の力は一番やってんけど、この前、とうとう塗り替えられたわ……サロン対抗戦決勝の最終戦の、そこにおる金髪姉ちゃんと、相手の姉ちゃん。オレが見た中ではケタ違いの強さやってんて!」
「ウテナとサーシャかぁ~」
……なんか、このお二人、スゴい似てますわね。
「えっと、じゃあ、一番はやっぱウテナで……」
「いやいや、それは安直やって、ラクト。あれはほぼ、不可抗力やったんやって。実際の最強はやっぱここの金髪姉ちゃん……」
「なるほど、たしかにそう考えると……」
二人とも、まさに男の子といったような感じで、やれ誰が強いだの、誰より誰が強いだの、ウッキウキで話している。
「……」
サーシャは以前、無言で二人の会話を見守っている。
無表情で静かにしているため、なにを考えるかは、分からない。
ただ、先ほどよりも、多少、疑いの目は……もちろんなくなっているわけではないが、先よりも和らいだように、なんとなく、ハディーシャには感じられた。
やがて、マナト、ミト、ジェラードもやって来た。
――スッ。
すると、サーシャが立ち上がった。
「マナト、ちょっと……」
サーシャがマナトを呼んだ。
「はい」
「ちょっと、見てもらいたいものがあるの。……ただ、ここでは、ちょっと」
「そうですか……」
……ちょっと、マナトさん、疲れてるというか、元気ないかしら……?
なんとなく、マナトの表情を見ながら、ハディーシャは思った。
「個室のほうに、場所、うつしますか?」
マナトの言葉に、サーシャはうなずいた。
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