610 ミトとラクト、手紙、盗み見
綺麗な、少し丸みを帯びたヤスリブ文字。
「おぉ……こ、これって」
「る、ルナさんの、直筆……」
※ ※ ※ ※ ※ ※
マナトさん
私、大変なことを伝え忘れておりました。
ほんと、再び会う、ほんの少し前まで、そのことについて考えていたことだったのに。
マナトさんと再び会えて、それまで考えていたことが、すべて吹き飛んでしまったような感じになってしまっていました。
再び会うことができた嬉しさで、どうになっていたんだと……、
※ ※ ※ ※ ※ ※
――サッ……!
とっさにミトとラクトは手紙から顔を上げて、お互い、見合わせた。
「こ、これは……!」
「や、やっぱり……!」
「お、おい、な、なんかやべぇよ……人の秘密を、思いっきり見てる気分なんだが……!」
「いやラクト、これ、気分じゃなくて、か、完全に見ちゃってるよ、人の秘密を、それも直接……!」
「……ぅ」
「!?」
寝台で寝ているマナトが、一瞬、ピクリと動いた。
ミトもラクトも完全に硬直してしまった。
「……」
「……」
そして、マナトを見守る。
「……」
だがマナトは起きることなく、少しだけ身体を動かしたのみで、再び心地よさそうに寝息をたて始めた。
「……い、いや、まだ寝てる。大丈夫だ……!」
「いや、で、でも、どうする……?」
「どうするったって、そりゃあ……」
「……」
ミトもラクトも、自然、目線が手紙に戻っていってしまった。
※ ※ ※ ※ ※ ※
再び会うことができた嬉しさで、どうになっていたんだと思います……。
本当は、このことは、再会したあのときに、すぐさまマナトさんのお耳に入れておかなければならなかったにも関わらず、遅れての報告になってしまいました。
ごめんなさい。
……少し前、私の前に、ジンが現れたんです。
それも、マナトさんの姿で。
※ ※ ※ ※ ※ ※
「え……!」
「おい、この手紙……!」
ミトとラクトの、手紙を見る表情が変わった。
※ ※ ※ ※ ※ ※
マナトさんに化けたジンは、私に「迎えにきた」と言った。
どこへ連れていこうとしたのか、なぜ連れ去ろうとしたのかは、分かりません。
しかし、そう言われましたが、私は、目の前にいるマナトさんが、どこか、マナトさんでないように思えてなりませんでした。
そして、あなたはマナトさんじゃ、ない、と、私は言った。
すると、ジンは塵となって、姿を消した。
それ以来、私の前にジンは姿を見せていません。……いや、私が、気づいていないだけなのかもしれないのですが。
もしかすると、マナトさんの前にも、現れるかもしれない。
そんな予感がするんです。
どうか、十分、注意して……、
※ ※ ※ ※ ※ ※
手紙を途中まで読んだミトとラクトは、顔をあげた。
「ルナさんの前にジンが……」
「だな。そしてその時も、やっぱりマナトの姿だったってわけか……」
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