メロ共和国 後編
サロン対抗戦、明けて
604 大通り、小さな酒場にて
翌日のお昼どき。
大通りの一角にある小さな酒場は、昼から開いていた。
カウンター席、テーブル席は、ともに満席となっている。
「は~い!ちょっと待ってね~!」
酒場の看板娘が、狭い店の中を縫うようにして、料理を持ちながら動き回っていた。
「てか、亭主さ、」
カウンター席に座っているキャラバンの若者の一人が、奥で大鍋やフライパンなどを動かし続ける亭主に尋ねた。
「この店、昼からも営業はじめたんだな?」
「ああ。……やるしかないんだよ、ははは」
亭主が苦笑気味に答えた。
「最近はもう、夜の営業が、からっきしになってしまっただろ?お酒を提供する我々のような小さな店にとっては本当に、いまの状況は致命的なご時世となっちまった。……夕方からじゃ、もう、商売になんないんでな」
「ジンの影響だろ?ヤバいよな」
「だから、昼から開けていることにしたが、さすがに昼から酒を飲むほどご機嫌な連中なんて、この店の利用者にはいないからな……」
「んで、慣れないランチつくってるわけね」
「ほっとけ!必死なんだよこっちは!」
「いやでも美味いぜ、このランチ」
「そ、そうか?」
割と若者たちには、亭主の手料理は好評なようだった。
「そういえば、キャラバンサロン大会、終わったらしいな」
「いや凄かったよ……!」
亭主の言葉を待ってましたといわんばかりに、キャラバンの若者は言った。
「最後の決勝戦なんて、もう、ステージぶっ壊しながら戦ってて」
「ほう、ずいぶんと物騒だな」
「アイツだよ。一時期失踪したって言われていた、あのウテナが姿を現し……」
「えっ!?ウテナさん!?」
ウテナに反応した看板娘が寄ってきて食い気味に尋ねた。
「ウテナさん、復帰したの!?」
「お、おう、たぶん、そうなんじゃね?なんか、途中まで、動きちょっとぎこちなく感じたけど、最後はもう、ステージめちゃくちゃにしてたから」
「えぇ~!わたしも見てみたかった~!でも、よかった~!」
うなだれながら、でも嬉しそうに看板娘は叫んだ。
「しかし、よかったな。ちょっと、ウテナに関しては命が危ないって噂も、あったからな」
「ああ」
「国が排除しようとしてたって噂でしょ!?ほんっっっと、ありえないんだけど!!なんでそん……!」
「はい、これ持っていって~」
「あっ、は~い!」
看板娘の言葉を遮るように、亭主が料理を渡した。
それを見たキャラバンの若者が関心して言った。
「飼いならしてるな~」
「あまり、大声で言っちゃいけない内容だったからな」
「あはは……、あと、元ごろつきからキャラバンになったオルハンが、もうズザザザって、ステージに亀裂入れたりオベリスク真っ二つにしたり」
「おう、あの悪ガキだったオルハンが」
「……まあ、負けちまったんだけどな、同じマナを取り込んだ、水を操る能力者に」
「へぇ」
――カチャッ。
「空いてますか?」
酒場の扉が開き、一人入ってきて亭主に尋ねた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます