596 戦いの中での問答
――ギッッ!!
「!」
すんでのところ。
ウテナの放った右拳にはめているナックルダスターを、サーシャのダガーが受け止めていた。
「あんただって……」
ウテナが素早く腕を横に振る。
――ギィンッッ!!
「!」
「ラクトを……たぶらかしたんでしょ!!」
ナックルダスターに挟まっていたダガーはその腕払いに逆らうことができずに、ダガーごとサーシャを横向きに体制を崩させた。
……顔ががら空き!!いける!!
飛び蹴りをくらわせようとウテナが踏み込む。
しかし、
――ブンッッ!!
「えっ!?!?」
サーシャの回し蹴りが飛んできた。
体制を崩すどころか、逆にウテナから受けた力に逆らわずに、軸足をうまく入れ換えて横に向いた勢いを利用して攻撃を仕掛けてくる。
……なんて体幹と対応力してるの!?このオンナ!!
――サッッ!
踏み込んだ足で、ウテナは後退した。
「……」
サーシャが、スッと直立になる。
回し蹴りでフワリと浮かび上がった白い水玉模様のドレスのヒラヒラが、ゆっくりと降りてゆく。
「……」
前にかかった長い金色の髪の毛を、その細く、淡いピンクの手で肩の後ろへとさげる。
見た目はまるで、戦闘などとまったく無縁にも見える、美しい乙女。
……それも、気に入らないのよ。
「……このテントに入ってから、ずっと、そうだった」
ウテナが片足を後ろへ振り上げた。
足下には、拳サイズのステージの欠片。
……なんで、ラクトを見ようとしたとき、いつも、いつでも、
「……なんで、あんたがあたしの視界に入ってくるのよ!!」
――ドッッ!!
「!」
サーシャがグッッと身体を反らす。その上をものすごいスピードでステージの欠片が飛んでゆく。
「ぅらあああ!!!」
ウテナがサーシャへ突撃。
「……」
――タァン!
サーシャも前へ。
――シュッッ!!
ウテナの右拳がうなり声をあげる。
――シュッッ!!
ダガーの、風を切る一閃が鳴る。
至近距離でのめまぐるしい攻防が繰り広げられてゆく。
「あなた……」
――ヒュッ!
ダガーへの刺突とともに、サーシャが口を開く。
「ラクトのこと、好きなの?」
「はっ!?勘違いしないでほしいんだけど!!」
――シュッッ!
ウテナが右の裏拳を放つ。
――ギリッ……!!
逆手持ちにダガーを握り、サーシャが裏拳を受け止めた。
――ギリギリ……!!
「ラクトはね、あたしのことが、好きなのよ……!!」
「……そう」
――ギリギリ……!!
「……私は、ラクトのことが、好きよ」
「!!」
――ギリリッッ!!
ウテナが右拳に、目一杯力を入れる。
――ギリリリリ……!!
少しずつ、ウテナが押し始めている。サーシャが、少しずつステージの端へと追い詰められてゆく。
「……どうしたの?怒ってる?」
しかしそんな中、サーシャは、少し微笑んでいる。
「こんのぉぉおおお……!!」
……マジで、なんなの!?なんなのよ……このオンナ!!
「あんたなんかに、ぜったい、負けない……!!」
「ナメないでちょうだい……」
――カキィィン!!
「え……!」
サーシャがダガーを振り上げている。そして、ウテナも右拳を振り上げさせられていた。
「あなたの弱い心が、ラクトを殺そうとしたんでしょ……!!」
――スァァ!!
サーシャのダガーが、ウテナの頭上から振り下ろされた。
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