585 決勝最終戦、ウテナVSサーシャ
「うおお……!」
「最後の最後に、めちゃくちゃかわいいコとか……!」
「た、たまんねえぜ!!」
――わぁ~~~!!
「……けっ!やたらと盛り上がっていたと思ったら、そういうコトかよ」
熱狂する観衆にチラッと視線を向けると、オルハンはつまらなそうに言った。
「あの人は……」
……たしか、マナトさん達が岩石の村の人たちと一緒に彫刻の納品に来てくださった時にも、いたような。
ルナは思い出していた。
「はじめて見るわね」
「前の交易のときは、彼女は一緒じゃなかったのか?」
「ええ、いなかったわ」
「じゃあ、強さは未知数か。ただあれだけ話し合って出てきた相手だ。間違いなく強いだろう……!」
前方では、フィオナとフェンが話し合っていた。
スラッとした、白い水玉模様の入った薄い黄色のワンピース。
そのしなやかな淡いピンクの肢体に、これ以上あるのかというほどに整った容姿。そして太陽のような、琥珀色の大きな瞳。
そして右腰には、そんな彼女には不釣り合いにも思えるダガーが、装着されている。
……なんて、キレイな人なの。
敵でありながら、ルナは見とれた。ちなみに公宮で会ったときは、ルナ的にそれどころじゃなく、結局、あんまり覚えていなかった。
――シャキッ……。
そのサーシャが、腰につけていたダガーを抜いて、かざした。
「……」
ウテナが応じる。右手にはめたナックルダスターの拳を握りしめると、前へ突き出した。
「……」
「……」
サーシャが目を細める。内側に潜んでいるはずの闘志が、その爛々と輝く琥珀色の瞳から、溢れ出している。
「ウテナ……」
ルナには十分すぎるほどに分かった。
背中からでも、ウテナからサーシャ以上の覇気を感じてる。
――おぉ……!
そんな2人を見て、会場全体が、息をのんだ。なにか、ステージでとんでもないことが起こりそうな、そんな雰囲気。
「な、なんだこの……」
「い、息が、しづらいんだが……」
ステージの上の2人に、観衆のほうがのまれている。
――キン……。
軽い金属音。
――サッ!
2人とも、後ろに跳躍して引いた。
「……えっ!?」
しかし、その着地先にもう、ウテナの姿はない。
――ヒュッッ!!
右拳が空を切る。ウテナが飛ぶように直進し、サーシャに殴りかかっていた。
――タッ!
サーシャが横へ跳躍。ウテナの一撃をかわした。
――タタタ……!
サーシャが駆ける。
「んっ!」
ウテナがサーシャを目で追った。左に向く。
サーシャの小回りが速い。ウテナの向いている逆側へと消えてゆく。
「くっ!」
ウテナは右へと振り向き返す。
「!?」
サーシャの姿がない。
――タァンッ!
「!!」
サーシャがウテナに向かって跳躍。
ウテナが左から右に向き直すよりも速く、サーシャが右側に回り込むと見せかけて反復跳びして左側からウテナに切りかかった。
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