574 試合後

 ――お、おぉ~!!


 ステージ上、一瞬の出来事に窒息していた観衆が、少し遅れて沸いた。


 「な、なんか決着ついてるんだけど!」

 「右向いて左向いたら男のほうが血を流してる!?」

 「は、はやすぎねえか!?えっ、決勝戦だよなこれ!?」


 あまりにも一瞬すぎて、その瞬間を見てない者たちも多いようだった。


 やがて、ステージの上に医療班が担架たんかを持って駆けつけ、すぐに、負傷して倒れた仲間のメンバーを担架に乗せた。


 「くっ、すまない、みんな……!」


 乗せられながらそのメンバーが、マナトやラクト、また、ステージに上がってきたメンバーに言った。


 「手加減したところを、まんまと相手にやられてしまった……!」

 「……えっ?」

 「い、いや、たぶんそうでは……」

 「みんな、俺の分まで、頑張ってくれよ~!」


 そして、あっという間に、医療班に運ばれていった。


 「……」

 「……」

 「彼なら、大丈夫ですよ。心配いりません」


 マナトとラクトが唖然として、メンバーが運ばれてゆく光景を見ていると、残っていた医療メンバーの一人が口を開いた。


 「血は出ていますが、すぐに止血できます。おそらく、あの対戦者の少女が、手加減してくれたのでしょう」

 「あっ、そうですか……」


 そのミリーはすでにステージ上手側を降りていた。


 「ウテナさま!任務完了であります!」

 「ミリー!ナイスゥゥウウウ!!」

 「ホント、一瞬だったわね!」


 フェンサロンの仲間に囲まれ、祝福されている。


 「おい、もう、降りようぜ、マナト……」

 「だね……」


 2人とも、ステージを降りた。


 先の、サーシャや岩石の村のメンバーがいたところへ。


 「えっと、もう、第二試合は、終わってしまったんですの?」


 いまだサーシャに目隠ししている召し使いが言った。


 「終わったっすよ」

 「あらやだ、ちょっと、よそ見している間に……」

 「……もう、手を離しても、いいんじゃない?」

 「あっ、すみませんサーシャさま……!」


 召し使いが、サーシャの目隠しを解いた。


 「あっ、ちなみに終わったから、第二試合」

 「……でしょうね」


 ラクトの言葉を聞くまでもないといった表情で、サーシャはステージ上手側に目をやった。


 「……んっ?」


 と、召し使いやサーシャに比べ、ニナとシュミットの様子は、少し違っていた。


 「あ、あのコ、めちゃかっこいい……!!」

 「もはや、美しさすら感じさせる一瞬のやられっぷり……ある意味、此度こたびの対抗戦で、もっとも印象に残った試合かもしれない……!!」


 ……ニナさんはともかく、シュミットさん、やっぱり独特の感性をしている。

 マナトは思った。


     ※     ※     ※


 「よっわ……肩透かしもええとこやんけ」


 決勝戦第二試合があまりにもあっさり決着がついてしまい、特別席で見ていたユスフは、げんなりした様子でつぶやいた。

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